北朝鮮が3月24日、新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」を発射した。ミサイルは通常より高角度で発射するロフテッド軌道を取り、北海道・渡島半島の西方約150キロの日本海、我が国の排他的経済水域に落下した。通常角度で発射すれば、射程が米国東海岸に届く1万5000キロに達するという。
サングラスに革ジャンという米ハリウッド映画『トップガン』のような格好で視察した金正恩朝鮮労働党総書記が、「新しい戦略兵器の出現」と喜んだ火星17の全長は、推計23メートル。「怪物」と報じたメディアも多数ある。ただ、防衛省関係者は「旧ソ連製ミサイルを改良し、大型化したようだ。米国のミニットマンや中国の東風31のような、洗練されたミサイルとは言いがたい」と語る。
北朝鮮の軍事開発部門で働いていた脱北者によれば、北朝鮮は1991年のソ連崩壊直後、ロシアやウクライナなどのミサイル技術者約50人を「米国に行く場合の2倍の給与」を保証してスカウトしたという。火星17も、ウクライナの国営企業が1960年代に開発したエンジンを、4基搭載しているとみられる。
問題は北朝鮮が、火星17がどこに飛んでいくのか、大気圏に再突入できるのか、科学的な確証を持っているわけではないことだ。北朝鮮には、米軍のように弾道ミサイルを追跡できる航空機や艦艇がない。大気圏再突入の際に発生する、数千度の熱やプラズマ放電を再現できる実験設備もない。「ソ連のICBMを作った科学者の作品だから大丈夫」と考えているわけで、危ないことこの上ない。
防衛省は2016年以降、北朝鮮のミサイル発射に備え、自衛隊法に基づく破壊措置命令を常時発令した状態にしている。先の関係者は「日本が狙われる場合だけでなく、誤って本体や部品が落ちてくる場合も想定している」と語る。実際、北朝鮮が3月16日に発射した弾道ミサイルとみられる飛翔体は、高度20キロに達せずに爆発している。
ただ、北朝鮮が今回の発射成功で満足することはなさそうだ。朝鮮中央通信は最近、正恩氏が「西海衛星発射場」を視察したと報じた。北朝鮮国家宇宙開発局も「軍事衛星を多数配置する」との考えを示している。
北朝鮮は4月15日の金日成主席誕生110周年に大規模な軍事パレードを実施する見通しだ。その前後に、「衛星運搬ロケット」と称した火星17を通常角度で発射し、1万キロ以上の飛行に踏み切る可能性が高い。米国のバイデン政権から核保有を認めてもらうまで、正恩氏は危ない火遊びをやめないだろう。
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source : 週刊文春 2022年4月7日号