3月22日に東京電力と東北電力管内で大規模停電が起きかねない事態に陥った。福島県沖の地震で複数の火力発電所が停止したところに、厳しい寒さが加わり、政府は初めて「電力需給逼迫警報」を出した。これを受けて朝日は23日付朝刊で「電力の安定供給が揺らぐ異例の事態となった」と書いた。確かに地震と季節外れの寒さだけに着目すればそうなのかもしれないが、本当に「異例」なのか。
経済産業省は昨年5月14日に同年7、8月と今年1、2月に電力需給が逼迫するとの見通しを発表した。曰く「夏はここ数年で最も厳しく、冬は東京電力管内で電力不足が生じる恐れがある」。梶山弘志経産相(当時)は会見で、「近年、事業環境の悪化などで火力発電所の休廃止が相次いでいる」と理由を語った。
東京地区の供給力を増やそうと、経産省は約50万キロワットの追加供給力を公募し、63万キロワットを確保。応急手当のせいか今年1、2月を乗り切ったようだ。毎日(23日付)によると、それでも停電危機が起きたのは厳戒態勢で臨んだ大手電力が「寒さが緩んだ2月末で対応の一部を解除し、定期点検に入る火力発電なども出て余力が乏しくなっていた」という。
大手電力の見通しの甘さはこの際、目をつぶる。問いたいのは「異例」ではなく「電力インフラの脆弱さが露呈した」のではないかということだ。経産省の資料によると今年7月の電力需給も厳しいようで、東京電力、中部電力管内の予備率は1.1%、8月はそれぞれ0.9%らしい。
真逆な指摘をするようだが、筆者は電力需給の数字をあまり信用していない。
2002年に東京電力福島第一原子力発電所の原子炉格納容器気密性試験で隠蔽が発覚。これに怒った当時の福島県知事が再稼働を容認しなかったため、「すわ首都圏で大停電か」と騒がれたことがあった。結局、パニックが起きなかったのは翌03年が冷夏だったからと説明されたが、実際には稼働していなかった発電所がいくつもあった。以来、「電力危機」には政治的な駆け引きの要素もあると思っている。
電力不足はボトルネックなのか眉唾なのか。「異例」で片付けては、夏場に再び電力で翻弄されるだろう。
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source : 週刊文春 2022年4月7日号