窓ガラスは砕け散り、セダンの運転席には血まみれの高齢男性の姿が。助手席に回り込んでドアを開けると、妻と見られる女性が寄りそうようにして息絶えていた――。

3月、ウクライナにおいてスマートフォンで撮られた動画が「ロシアの平和とはこんなものか?」のコメントとともにツイッターに投稿。世界的に拡散される事態に発展した。
1991年の湾岸戦争では米CNNが、2003年のイラク戦争では中東のテレビ局「アルジャジーラ」の報道が世界の世論をリードした。一方、今回の特徴は、こうして市民らがスマホで撮影した動画が、世界を動かしている点だ。
件の動画が大きな反響を呼んだのは、ロシア軍と見られる戦車がセダンを砲撃した瞬間を、近くの監視カメラが捉えていたことがわかり、ウクライナ軍がその映像を公開したためだ。
それによれば道路を走行中のセダンは戦車が前から来たのを見て停車。すると戦車が2発、砲弾をセダンに命中させ、木っ端微塵に。戦車はUターンして去っていったのである。
「国際法上、民間人への意図的な攻撃は戦争犯罪となる。動画を投稿したのはウクライナ人女性を名乗るアカウントですが、男性が砲撃直後の車をスマホで撮影している様子が窓ガラスに映っていた。セダンの形状や周囲の景色が合致したことで、2つの動画はリンクされ、一気に拡散されたのです」(外信部記者)
ITジャーナリストの三上洋氏は、今回のウクライナ侵攻を「TikTok戦争」と指摘する。
「TikTokやFacebook、InstagramといったSNSが“戦場”となっている。通常の戦争手段の一方で、市民の投稿、政府のプロパガンダ、フェイクニュース、さらにサイバー攻撃……スマホで撮られた画像がSNSで入り乱れている。こんなハイブリッド型の戦争は史上初でしょう」
既存メディアの場合、死体の映像が出ないよう配慮するが、SNSの映像はむき出しだ。在日ウクライナ大使館はロシア侵攻部隊の兵士の死体を映したという動画をツイートした。

これらの真贋を見極めるスピードも速い。
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source : 週刊文春 2022年4月7日号