3月23日午前10時過ぎ、山梨県甲府市の邸宅で、一人の政界関係者が静かに息を引き取った。

 金丸信吾氏、享年77。

甲府駅前の事務所で取材を受ける信吾氏

 自民党でキングメーカーの異名を取った金丸信・元副総理の次男で、父の地元担当秘書を長く務めた。1990年の「金丸訪朝」では団長秘書として随行。信氏が金日成と極秘会談を行った「空白の2日間」も、同行議員団と別行動を取り、両巨頭が阿吽の呼吸で国交正常化交渉開始を妥結する過程をそばで見守った。

 その後、信吾氏は父の代理で短期間に10回も訪朝。金日成と7回、金正日と2回も単独会見した。だが、92年、信氏が東京佐川急便事件で政界を引退すると、日朝交渉は中断された。

 

 山梨では信吾氏を後継に推す声もあったが、本人は固辞。一族が大株主のテレビ局やゴルフ場の経営に携わる傍ら、亡き父の汚名を雪ぐ第2の人生を送った。

 金丸家は代々続く造り酒屋の大地主。信氏は筋金入りの反共主義者だったが、訪朝後から「朝鮮半島出身で、北から金塊をもらった」とのデマが流された。実際は財テクが趣味の夫人が田中貴金属から購入したもので、同社の刻印があったという。

 一部マスコミは検察が元麻布の豪邸から発見したとの物語を仕立て上げたが、信吾氏曰く、事務所で保管しており、彼が金庫ごと差し出した。

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source : 週刊文春 2022年4月21日号