「現在の強力な金融緩和を粘り強く続ける」
4月13日、都内で開催された信託大会でそう宣言したのは、黒田東彦日銀総裁(77)。その発言から10分も経たないうちに、円相場は1ドル=126円台に突入した。3月半ばまで115円台で推移していたが、1カ月余りで10円以上も円安に進んだ格好だ。
「米FRBが金融引き締めに転じたのと対照的に、黒田氏はゼロ金利政策を継続すると強調。FRBは今年6〜7回の利上げが予想され、黒田発言を受け日米の金利差が更に開くと見た投資家が円売り・ドル買いに動いた形です」(大手信託銀行役員)
信託大会では、毎年日銀総裁が挨拶に立つのが慣例になっているが、「挨拶がこれほど材料視されたことはない」(同前)という。
日銀関係者が言う。
「物議を醸しましたが、事前に挨拶の内容を主催者の信託協会に知らせることはありません。挨拶文は内田眞一企画担当理事、清水誠一企画局長、川本卓司政策企画課長のラインが作成したものですが、3月18日の総裁定例会見と中身はほぼ同じ。今回も黒田氏は、この事務方が作成した文章を淡々と読み上げたに過ぎません。心なしか、以前に比べ、元気が無いようにも見えましたが……」
異次元緩和に拘る黒田氏の心境を探るべく、マーケットでは、ネクタイの色も注目されているという。
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source : 週刊文春 2022年4月28日号