「二階派の終わりの始まり」と永田町で囁かれているのが、4月14日に公表された衛藤晟一元沖縄・北方担当相(74)の派閥脱退だ。片山さつき参院議員に続く退会で所属議員は42人となり、自民党主要五派閥のなかでも退潮傾向がひと際鮮明となった。
「衛藤氏は近く安倍派に入るようだ」(自民党関係者)
大分大学在学中から右派活動に熱心だった衛藤氏は、安倍晋三元首相の若手時代に保守系シンクタンク「日本政策研究センター」の伊藤哲夫代表ら自らの人脈を惜しみなく紹介。さらに、「あなたは将来、総理になる人だから、社会保障もしっかり理解しておかないと」と助言した。1999年、厚生政策を担う党の社会部会長に、当選2回の安倍氏が異例の抜擢を受けたのも、衛藤氏が兄貴分である亀井静香政調会長(当時)に頼み込んだからだ。
衛藤氏は「安倍チルドレン」でもある。大分県議を経て、1990年衆院選で初当選した際に尽力したのは、安倍氏の父・晋太郎氏だった。そんな衛藤氏が二階派を抜け、親子2代の縁がある安倍派に馳せ参じるのも、むべなるかな。
加えて、志帥会(二階派)の変質も背景にある。田中角栄元首相の薫陶を受けた二階俊博元幹事長が2012年に領袖となった後、平野達男氏や細野豪志氏ら旧民主党系を次々に引き入れ、「数は力」の融通無碍な派閥に。だが、かつては平沼赳夫氏や亀井氏、中川昭一氏らが「憲法改正」を叫ぶ純度の高いタカ派集団だった。そんな面々と意気投合していた衛藤氏は、理念なき数集めにうんざりしていたという。
“最後の一藁”は昨年の総裁選。安倍氏に頼まれた衛藤氏は高市早苗政調会長を推し、山口壯環境相ら二階派の十数人を高市氏支援でまとめあげ、当初、河野太郎氏でまとめようとした武田良太前総務相ら派中枢との間に亀裂が入った。
「今回の衛藤氏離脱は二階派が4四分五裂する契機になりそうだ」(政治部記者)
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source : 週刊文春 2022年4月28日号