都市封鎖で自殺、警察と衝突 悲劇の上海で流行る禁歌とは

THIS WEEK「国際」

野嶋 剛
ニュース 国際

 中国の強権的な都市封鎖に対する反発が強まっている。新型コロナの感染拡大は上海、広州など45都市に及び、全人口の4分の1以上、約3.5億人が行動制限を受けているという。

 世界がコロナとの共存に向かうなか、中国は習近平国家主席の肝いり政策「動態清零」への執着を崩さない。動態は臨機応変、清零はゼロコロナを意味する。感染が生じたら即応的に地域を封鎖して大規模検査を行い、リスク対象者を隔離して封じ込める手法だ。国産ワクチンと組み合わせ、一定の成果を出してきた。

ゼロコロナに固執する習近平

 だが感染力が強いオミクロン株を前に、鉄壁に思われた動態清零の守りが破綻した。中国ワクチンはオミクロンに効果が薄いとされる。ゼロから「共存」へ転換する契機にも思えるが、習近平の面子を潰すため、議論すらしにくい。結局、犠牲になるのは庶民だ。

 封鎖が実施された巨大都市・上海は怨嗟の声で満ちている。一切の外出を禁じられ、医療を受けられず、病状が悪化する人々が相次いだ。71歳の男性は急激な腹痛を訴えたが何度も病院で診療を拒否され、痛みに耐えきれず、マンションから飛び降りて命を断った。退職して趣味のバイオリンを生かし、楽団に参加するなど第二の人生を歩み始めたばかりで、悲劇に対する同情が広がった。

 食料が無く「餓死寸前だ」との叫びも相次ぐ。配給のジャガイモは芽が伸びており「食中毒を起こさせる気か」と反発を受ける始末。隔離を強いる公安警察と突破を試みる住民との間での衝突も絶えない。高速道路の封鎖で物流も阻害され、経済成長や対外輸出への悪影響も確実視されている。

 市は感染危険区以外では拡大は収まりつつあるとして、正常化へ段階的に移行する意向だが、習近平の威信に傷がついたのは確かだ。

 中国の権力者が最も恐れるのは、民衆の反乱だ。習近平体制は民主化運動や批判的な言論人を取り締まってきたが、コロナは人々の健康と生活に関わる問題だけに強権を発動しにくい。

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source : 週刊文春 2022年4月28日号

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