「会社からアプリをダウンロードするよう言われ、500日経ちました。でも通知があったのは一度だけ。周囲に陽性者が何人もいるのに……」(40代女性)

 覚えているだろうか。新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA(ココア)」の運用開始からまもなく2年。なぜ、こんなことに――。

 

 ココアは、スマホのブルートゥースを使い、陽性者の登録をした利用者と1メートル以内で15分以上接した場合、情報が通知される仕組み。検査を促して感染予防に役立てようと、安倍晋三首相(当時)“肝いり”で内閣官房が主導、2020年6月にスタートした。

 初年度には約3.8億円が投じられたが、スタートから躓いた。20年9月から4カ月間、スマホのアンドロイド端末では通知を受け取れない不具合が発生したのだ。運用を担った厚労省幹部は厳重注意処分を受け、業務委託先企業は21年4月に変更された。

安倍氏の“肝いり”政策だった

 アプリの有識者検討会合委員・上原哲太郎立命館大教授が指摘する。

「ココアは、国による国民監視を防ぐ観点から、ボランティアのエンジニアにより開発されたオープンソースソフトウェア(OSS)を元に作られました。しかしそのメンテナンスを請け負った企業の技術やノウハウが乏しかった。OSSは不具合があればボランティアが直し、社会で育てていくものなのに、ココアはそうなりませんでした」

 ダウンロード件数は4月22日時点で3583万と、人口の3割程度。陽性登録件数は約94万で、累計感染者数の1割強にとどまっている。

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source : 週刊文春 2022年5月5・12日号