「戦争が始まったら、ロシア軍が圧倒的だと思っていたのですが、ウクライナ軍がいま攻勢をかけている。私の観察眼が甘かった。そう反省しています」
そう述べるのは、東京大先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠氏だ。ロシアの軍事・安全保障政策が専門。著書『現代ロシアの軍事戦略』(ちくま新書)は増刷を重ね、8万部を超えた。小泉氏が、ウクライナの戦況を徹底分析する。
2月24日、ウクライナへ仕掛けられたプーチンの戦争は、電撃戦でロシアが勝利するという予想に反し、膠着状態に陥った。ロシア軍の死者は2万人以上とも言われ、甚大な損害を負っているとみられる。小泉氏はこう分析する。
「最初の1カ月をウクライナが凌ぎ切ったことが大きい。ロシアは首都キーウ攻略を諦め、東部制圧に方針転換せざるを得なくなった」
さらに5月9日の対独戦勝記念日までの、東部ドンバス地方の制圧も果たせていない。初期段階での制圧を目論んでいた北東部ハルキウからも撤退を開始した。
「至上命題だった第二の都市・ハルキウを攻略できなかったのは相当苦しい。5月に入りウクライナが激しく反攻を仕掛け、ロシア軍は周辺のドネツ川で橋を落とすなど、守勢に回らざるを得なかった。ハルキウ南東のイジュームを起点に南下を狙ったがそれも出来ていない。このまま押し込まれると補給路も断たれる。こんな状況になるとは……」
意外な戦況は、なぜ生まれたのか。そこには三つの理由があるという。
初回登録は初月300円で
この続きが読めます。
有料会員になると、
全ての記事が読み放題
コメント機能も使えます
既に有料会員の方はログインして続きを読む
※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版+雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。
source : 週刊文春 2022年5月26日号