国際政治を専門とする慶應義塾大学の廣瀬陽子教授は、激変するロシアと中国の関係性をこう指摘する。

「ロシアにとっては、もはや頼れるパートナーは中国しかいないと言っていい」

廣瀬氏(慶應大HPより)

 ロシアがウクライナに侵攻したのが2月24日。中国が威信をかけて開催した北京五輪閉幕4日後で、パラリンピック開幕8日前のことだった。

「2月4日のプーチンと習近平国家主席の会談。ウクライナ侵攻をほのめかしたプーチンに対し、習近平は『五輪期間中は避けてくれ』と頼んだと言われています。プーチンの目算としては、2日ほどで首都キーウを落とせるはずだった。しかし予想外に戦闘が長期化し、パラリンピック前に終わるどころか大規模化してしまった。習近平にとっても想定外だったでしょう」

 

 頻繁に合同軍事演習や首脳会談を行うなど、「蜜月」の印象が強い中ロ関係。ただ緊張が続いた時代も長かった。ソ連時代の1969年には極東アムール川周辺で国境をめぐる軍事衝突があり、2004年まで解決しなかった。カザフスタンなど中央アジアや旧ソ連諸国での影響力を巡る争いも根深い。また中国は、ソ連時代に軍需産業の拠点であったウクライナと良好な関係を築いており、近年も軍事技術や空母、石炭や穀物などを大量に輸入している。

「ウクライナの農地には中国の農民も多く送り込まれています。それゆえ、中国は基本的に侵攻に反対の立場だったのです」

 しかし中国は、ウクライナ侵攻を受けた国連総会緊急特別会合で、ロシアを非難する決議案の採決を棄権。王毅外相は「対話と話し合いを通じて、平和的な方法で争いを解決しなければならない」と控えめに訴えた。

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source : 週刊文春 2022年6月2日号