5月27日午後3時前、観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が作業船に載せられ、網走港に到着した。港は波しぶきが立つほど強風が吹き、船体を覆うブルーシートは激しくなびいていた。
知床沖で沈没してから34日。曳航中の海底落下など、幾多の障壁を乗り越え、ようやく港へと引き上げられたのである。
ほぼ完全な形で船体が見つかったものの、事故原因の特定は困難を極めるという。日本水難救済会常務理事・遠山純司氏が解説する。
「船体にある複数の傷の中から、沈没の原因となった傷を特定するのは、かなり難しい。また、エンジンの故障がいつ発生したのかを調べるのにも、膨大な時間がかかります。今後、再現実験や専門家による鑑定があるかもしれませんが、半年から1年くらいを要するものと思われます」
目撃者がいない中、船内の遺留品が頼みの綱だという。
「船はビデオプロッタを搭載していなかったので、事故原因特定に繋がる航跡が分からない。ただし、もし遺留品の中でGPS機能付きのタブレット等があれば、航跡が判明するかもしれません。また、写真や動画に沈没までのプロセスが記録されていれば、事故原因特定の補強資料となる可能性もあります」(同前)
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source : 週刊文春 2022年6月9日号