不肖・宮嶋、これが最後の戦場と言いながら、再びウクライナに舞い戻ってきた。今度のベースはロシア国境からわずか40キロ、ウクライナ第二の都市ハリキウ。ウクライナ軍の健闘により、ハリキウを包囲していたロシア軍を国境近くまで押し返し、市民も徐々に町に戻ってきた。しかし、そのハリキウの中心部に昼間から砲弾が降り注ぐ始末である。夜中に轟く空襲警報に何度も飛び起きるばかりか、その直後の爆発音と衝撃の連続で一睡もできん。
ロシア軍の狙いは明らか。ウクライナ南東部の完全制圧を企むロシア軍は、ウクライナ軍の兵力分散の目的で、国境の向こうやルハンスク州から砲撃を繰り返し、斥候を送り込み、ハリキウ市民をびびらし続けている。そして避難の機会を逃した市民が地下鉄に殺到、地下都市と呼べるコミュニティを作りあげた。飲料水は無料、ボランティアから温かい食事も日に三度提供される。家具を持ち込む一家もいるが、ベッドも市から貸し出される。教育はオンラインしかないが、今夜安全に眠れ、明日も目が覚める日々の方を選ばざるを得ないのである。にもかかわらず、ハリキウ市は早々に地下鉄営業再開を決定、地下の住民は地上の避難所へ移住しつつある。市民が地上の我が家へ帰る日はいつになるのか。
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source : 週刊文春 2022年6月9日号