不肖・宮嶋、3週間ぶりのウクライナの首都キーウへの帰還である。しかし、その変わりように目が点になった。これが戦争当事国、しかも侵略されつつある国の首都なのか。いやむしろ普通のヨーロッパの都市に戻りつつあり、喜ばしいと言うべきか。

キーウ

 ミハイリフスカ広場にて。ウクライナ軍が鹵獲、破壊したロシア軍の戦車や武器がトロフィとしてさらされ、老若男女のキーウ市民が集うテーマパークと化していた。なお少女がのっかっているのは巡航ミサイルである

 

 初めてこの町に潜入した3カ月前、ロシア軍は東西北部を包囲しつつ、キーウから20キロまで迫っていた。350万の人口の半数近くが首都から脱出、通りから人も車も消え、雪に加え砲弾も降り止むことはなく、市民は凍てつく防空壕で恐怖に震えるしかなかった。それが今や駅から宿まで一度も検問にひっかからないのである。ロシア軍侵攻から100日経過した今、大統領府側のビアガーデンでも昼間から市民がジョッキを重ねている。通りのカフェのパラソルを開き、珈琲を啜る音と笑い声が銃声にかわって聞こえてくる。

 ミハイリフスカ広場はじめ市内のところどころに、ウクライナ軍が鹵獲(ろかく)、破壊した戦車やミサイルが戦利品として並べられ、日々増えつつある。キーウ市民は興味津々覗き込んでは、やがて火砲の砲身を鉄棒や平均台などの遊具にして、歓声をあげる始末である。

 
 

ハリキウ

 ハリキウ市ど真ん中、ハリキウ州庁舎前のヨーロッパ最大規模の広さを誇る「勝利広場」。ロシア軍が放ったミサイルが突き刺さったまんまになっているが、もはや戦争が日常化しており、立ち止まる市民は稀であった

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source : 週刊文春 2022年6月16日号