人類は、戦争の度に科学を進歩させてきた。今回、ロシア軍の侵略に対するウクライナ軍の反撃の目となったのはドローンと言っていい。まさにドローン戦略の優劣が戦いの雌雄を決する。そのウクライナ軍のドローン情報小隊に不肖・宮嶋、3日間従軍を許され、寝食を共にし、最前線で弾丸の下を潜ってきた。管轄はハリキウ市北東部とロシア国境地帯。国境近くの森林地帯に進出し、ドローンを駆使して、敵の捜索、射撃誘導、着弾観測を担う。部隊の目となる最も重要な任務である。ドローンには、対地ミサイルを搭載した攻撃型、敵陣に突撃する自爆型などあるが、この小隊が操るのは、中国製の偵察型。小隊員全員がドローンパイロットかつ情報処理の専門家かつ兵士である。
数両の装甲車で最前線に辿り着くと、森の下に掘られた塹壕に車両や機材を隠す。「我々の偉大な友人、ミスター・イーロン・マスクに感謝する」。小隊長ユルゲンの作戦開始宣言とともに、アンテナ群を擬装、数機のドローンを次々離陸させていく。「テイク・オフ」「テイク・オフ」。コントローラーから英語のアナウンスが流れた直後、ドローンは低音の羽音ごと、あっと言う間に上空に消えた。あとは衛星経由でドローンの撮影画像や情報を共有、解析している司令部と連絡を取りつつ、敵を捜索する。敵を発見したら、司令部が、戦車、砲兵、歩兵部隊に攻撃を命じ、射撃、ドローン情報小隊はドローン画像から、着弾観測。もっと左、ちょい右と指示しながら、目標命中、目標無力化などの射撃効果判定する。しかし、当然敵も衛星やドローンを使い、こちらを血眼で捜している。実際、ユルゲン小隊は2度敵ドローンに発見され、集中砲火を浴びている。不肖・宮嶋が同行して2日目にも2名が戦死、4名が負傷。この4週間で15機のドローンも失った。よって、敵の妨害電波を探知すると直ちに塹壕に身を潜める。その間も敵味方双方の砲弾が絶えず頭上を飛び交う。この間が堪らず恐い。1秒でも早く攻撃が終わることを震えながら祈る。
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source : 週刊文春 2022年6月23日号