「皆様に大変なご心配とご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」

 6月15日、突如として開いた会見で深々と頭を下げたのは、石川県加賀市・山代温泉で旅館「瑠璃光」「葉渡莉」を経営する「よろづや観光」の3代目・萬谷浩幸社長だ。

瑠璃光
「モーニング娘。’21」の加賀楓(左)、「OCHA NORMA」の中山夏月姫(右)と萬谷社長(同社SNSより)

「コロナ禍の約15カ月にわたる休業期間中、受給した雇用調整助成金のうち約2000万円が不正受給に当たると労働局から指摘を受けた。故意ではない。すみやかに返還し、再発防止に努めたい」

「不正受給の認識はなかった」と強調する社長。実はその3日前、「週刊文春」は社長を直撃していた。取材から浮かび上がるのは、社長の“公式見解”とはかけ離れた、“巨額不正”だった。

「よろづや観光」は、約250人の従業員を抱え、来秋公開の小芝風花主演の映画『レディ・カガ』のロケ地にもなるほど、加賀を代表する名門旅館の一つだ。そんな名宿による”不正受給”は、内部告発によって、露見することになった。今春、現役社員たちが石川労働局に告発したのだ。幹部のA氏が語る。

「タイムカードを押さぬよう徹底されていた」

「コロナ禍で約15カ月の休館期間中も、約20名いる幹部は補助金申請や通販業務、館内整備等に追われていた。月の出勤日数はコロナ以前並の22日前後でした。しかし、そのほとんどが“休業日”としてタイムカードを押さぬよう徹底されていたのです。中には会社の指示を無視してタイムカードを押し続けた社員もいたため、会社が作成した時間外申請書と齟齬が生じ、労働局にとって動かぬ証拠となった。ただ、これは氷山の一角。不正の総額は2000万円どころではないのです」

「タイムカードは押さなくていいです」と書かれた実際の連絡
同僚に、休業日に出勤するのかと問われて「そうす」と答えたLINE

 発端は2020年5月、幹部会議で示された萬谷社長の方針にあった。社長は、「お金は雇調金が支給されるわけだから、休んでいても仕事しても同じ。ならぼんやり休んでいることないよね」

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source : 週刊文春