オクシズと呼ばれる緑豊かな静岡県の山間部。ヒノキが香るその一角を登ると突如、“禿げ山”と化した異様な光景が飛び込んでくる。一体何が起きているのか。

撮影 吉田暁史

 舞台は、静岡市中心部から車で1時間半程離れた標高1400メートルの山中。市内に住む安池勘司さんが兄の倫成さんと共同所有する土地のヒノキ約6000本が伐採されたという。

 始まりは2年前。県の推進する「森の力再生事業」の一環で、静岡市森林組合が提案した間伐を倫成さんが受け入れた。山崩れ防止などを目的とし、令和2年度は5メートル間隔での伐採を実行。その時は特に問題無かったという。ところが――。

「令和3年度に始まった間伐は、15メートルの幅に変更して実行されたのです。“強度な”列状間伐をするとだけ事前に伝えられましたがまさかここまでとは……」(倫成さん)

撮影 吉田暁史

 勘司さんが憤る。

「令和3年度の間伐は兄にだけ伝えられ、もう一方の所有者である私には全く説明が無かったのです。補助金を多く使うために幅を広げて伐採を行ったのではと疑ってしまいます」

 間伐を実行した森林組合に事実関係を尋ねると、「県の事業計画に沿って実行しました。所有者と認識の相違があった」と担当者が答えた。

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source : 週刊文春 2022年6月30日号