38年前、京大卒の父が自死する。母は統一教会に入信し財産をほぼ寄附して、再三、韓国に渡るようになる。さらに1歳上の兄が難病で失明した。山上は奈良有数の進学校に通いながら、大学進学もままならず、入隊した海上自衛隊で自殺未遂。事情聴取に語ったのは、統一教会への恨みだった。銃撃事件を聞いた母は洩らした。「教義に反することは…」。

 

「ドーン!……ドーン!!」。7月8日、午前11時31分。憲政史上最長、通算8年8カ月にわたって日本を率いた元首相を2発の凶弾が襲った。終始不気味なほど冷静に、許されざる大罪を犯した容疑者は、一体何者なのか。

「あの子の母親は統一教会の催しで韓国に入り浸ってなかなか帰って来なかった。あの子は宗教にハマる母のことでずっと思い悩み、長いこと苦しめられてきたんですわ」

 こう告白するのは傘寿が近づいても矍鑠(かくしゃく)とした様子の“暗殺犯”の父方の伯父、その人である。今回、事件の背景をきちんと報じてほしいと、合計2時間半に及ぶ小誌の単独取材に応じた――。

 参院選投開票日を二日後に控えた7月8日、午前11時29分。安倍晋三元首相(67)は、奈良県の近鉄大和西大寺駅前で応援演説のため壇上に立った。その背後に、マスクに眼鏡、灰色のポロシャツ姿の男が忍び寄る。直後、立て続けに二度轟音が鳴り響き、たちまち白煙があがった。

「2発目が後ろを振り向こうとした安倍氏の左胸と首を貫通。約6メートルの至近距離からの発砲でした」(社会部記者)

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source : 週刊文春 2022年7月21日号