「指示はしていません」
法廷で起訴内容を否認し、無罪を主張する巨躯の女を、傍聴人の多くは冷めた目で見つめていた。
2020年4月18日、福岡県篠栗町のマンションで碇翔士郎(いかりしょうじろう)ちゃん(当時5歳)が餓死した事件で、母・碇利恵被告(40)の“ママ友”である赤堀恵美子被告(49)が保護責任者遺棄致死などの罪に問われた裁判員裁判。そこで露わになったのは、“洗脳支配”されていた母とママ友の対決姿勢である。
9月2日、痩身の碇は短めの黒髪を後頭部でちょこんと束ね、黄色いTシャツに黒いパンツという姿で証人尋問に立った。今年6月の第一審で保護責任者遺棄致死罪に問われ、懲役5年の判決が下ったが執行猶予を求めて控訴中。今回は証人としての出廷だ。
碇は事件前、赤堀のことを偽名である「ナツコ」と呼んで慕っていたという。だが法廷では被告人席に一切視線を向けず、「赤堀」と呼び捨てにして検察官らの質問に答えていった。
碇は赤堀から架空のママ友トラブルや元夫の浮気などを吹き込まれ、暴力団関係者の「ボス」がその解決をしてくれるというストーリーを信じ切っていたと主張。約2年間で1300万円以上の金を搾取され、翔士郎ちゃんの死亡直前は、食費や家賃、光熱費も払えず凄惨な状況にあったという。
「私は赤堀のことを恐れ、信じてしまった。翔士郎にはどうしても食べさせてあげることができなかったんです。その結果、あの子を助けてあげられなかった。翔士郎に対しては本当に謝っても謝り切れないです」
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source : 週刊文春 2022年9月15日号