「今から1年8カ月前、国際医療研究センター病院の心臓手術で兄は亡くなりました。4時間の予定だった手術は11時間続くなど不可解な点が多々あった。私たちは医療事故調査制度に基づく調査を求め、その過程で重大な証拠も手に入れました。にもかかわらず、病院側は『第三者機関による原因究明は必要ない』と拒否し続けてきた。私たちからすれば、医療事故を隠蔽されたという想いです」
筆者の取材にそう憤りを露わにするのは、兄(70代前半)を失ったAさんだ。
国立国際医療研究センター病院は、高度専門医療を提供する日本有数の総合病院。特に感染症治療では司令塔的な役割を担い、志村けんら数多くの著名人も入院してきた。岸田政権は国立感染症研究所と統合させ、日本版CDC(疾病対策センター)を発足させる方針を示している。
同センターの國土典宏理事長は、日本外科学会理事長や、医療事故の調査を担う第三者機関である一般社団法人「日本医療安全調査機構」の理事を歴任。群馬大学病院で腹腔鏡手術の後に8人が死亡した事故が発覚した際には、調査の必要性を厳しく指摘していた。
そんな國土氏率いる日本最先端のセンター病院で一体、何が起きたのか。
11時間の大手術の2カ月後に死亡 死因は「手術に関連した心筋梗塞」
Aさんの兄が、僧帽弁閉鎖不全症(左心房と左心室の間の僧帽弁がきちんと閉じない病気)の手術を受けたのは、2020年12月10日のことだった。執刀医は心臓血管外科診療科長。通常の胸骨切開手術ではなく、右胸の肋骨の隙間から特殊な器具を入れる低侵襲心臓手術(MICS)が行われた。
Aさんが振り返る。
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source : 週刊文春