崇高な理念を実現するため、日本人信者たちは現金を抱えてラスベガスへと向かった。だが彼らの献金は教団幹部のギャンブルに溶けた――。「解散命令請求」待ったなしの統一教会“最大の暗部”を元教会長が告発する。

 壮観なグランドキャニオンをバックに、笑顔をみせる数十人の男女。絶景の世界遺産を巡る一同の表情は解放感に満ちている。場面は変わって、薄暗く照明が調整されたフロア。整然と並んだスロットマシーンがぎらついた光を放つ。外では“眠らない街”の眩いネオンを浴びたベラージオホテル前の噴水が、水しぶきを煌めかせていた。

参加者が撮影したラスベガスの風景

 これらは、10年以上前にアメリカ・ラスベガスで撮影された膨大な写真の一部である。日本からこのツアーに参加したのは、みな統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の信者たち。彼らには、ある重要な“ミッション”があった――。

 12月14日、文化庁は統一教会に対し、宗教法人法に基づく2回目の質問権行使に踏み切った。視野にあるのは、教団への解散命令請求だ。文科省担当記者が解説する。

「教団は文書で関連資料の提出を求められており、期限は2023年1月6日。その後、信者に対する献金ノルマと組織的関与の有無を検証し、政府が解散命令請求の要件とする違法行為の『組織性、悪質性、継続性』があるか否かを判断することになります」

 信教の自由が保障されている世で、ことさら統一教会が批判を集めてきた最大の要因は、その常軌を逸した集金システムにある。山上事件を引き合いに出すまでもなく、過度な献金ノルマに囚われた信者の家庭は時に破綻し、家族の絆は引き裂かれてきた。

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source : 週刊文春 2023年1月5日・12日号