先進国から運び込まれ、途上国で不法に投棄される電子廃棄物(E-waste)。日本で携帯を1台購入すると、アフリカで不法投棄された携帯が1台リサイクルされるという「ONE for ONE」の取り組みが、日本でも初めて導入された。

悪臭が立ち込める電子廃棄物の「墓場」

 見渡す限りの大地を埋め尽くしたゴミの山。その大半が壊れたパソコンや携帯端末、電子レンジやテレビといった、いわゆる電子廃棄物(E-waste)だ。

 アフリカ西部、ガーナの首都・アクラの郊外にある世界最大の“電子廃棄物の墓場”アグボグブロシー地区。東京ドーム約三十個分の土地に、数千万トンもの不法投棄された電子廃棄物が野ざらしのまま積み上げられている。

 まわりを見渡すと、あちらこちらで黒煙が立ち上っている。“バーナーボーイ”と呼ばれる貧しい少年や若者たちが廃棄物を燃やして、内部の金属を取り出しているのだ。一日十二時間、廃棄物の山をあさって得られる収入は五、六百円ほど。それでも貴重な現金収入だ。あたりには燃えたプラスチックやゴムの悪臭が充満している。電子廃棄物を燃やすことで発生する有毒ガスは、そこで暮らす人々と周囲の環境に深刻な被害をもたらしている。

世界最大の電子廃棄物集積所であるガーナ・アグボグブロシー地区。貧しい人たちは不法投棄された電子機器を燃やし、燃え残った鉄や銅の残骸を売って生計を立てている。

 いま世界で最も増えている廃棄物、それが携帯電話などの電子廃棄物だ。2019年には世界で5360万トンの電子廃棄物が発生し、2050年には1億1000万トンになると予測されている。その多くが、先進国から途上国へと運び込まれ、不法に廃棄されているのだ。

 このアフリカの電子廃棄物の問題に取り組んでいる企業が、オランダ・アムステルダムにある。アフリカの電子廃棄物を回収し、リサイクルしているClosing the Loop社(CTL)だ。

 IT機器のサステナビリティに着目したエコラベル「TCO Certified」。CTLはその第三者認証機関によって初めて認証されたリーディングカンパニーである。危険をともなう野焼きの報酬以上の値段で廃棄された携帯端末を買い取り、EU圏内のリサイクル施設に輸送、そこで適正にリサイクルする。それによって、現地の劣悪な労働環境を改善しようというのだ。

「CTLは、新規に販売される携帯端末等の電子機器に対して、アフリカで廃棄された機器を回収・リサイクルすることで、同等の補償(compensation)を付加する『E-waste Compensation』というプログラムを行っています。オランダでは、すでに通信キャリアのT-Mobile×サムスン、ボーダフォンが契約を結んで、定量、定性両面で実績をあげています。伊藤忠商事ではCTLと提携して、この電子廃棄物補償サービスを日本国内の法人向けに提供することにしました」(伊藤忠商事 通信ビジネス部 辻貴允さん)

 日本で携帯端末を新規に一台購入すると、アフリカで不法に投棄された端末一台が適正にリサイクルされる。「One Buy for One Recycle」の取り組みは、まさにSDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」だ。

サーキュラーエコノミーを実現するために

 CTLとの提携が決まると、辻さんは早速、国内の通信キャリアやモバイル端末メーカーをまわった。SDGsの取り組みとして、このプログラムの活用を提案するためだ。最初に手を挙げたのは、「arrows」シリーズを製造している携帯電話メーカーFCNT株式会社だった。

「辻さんから電子廃棄物補償サービスについてお声がけいただいたのは、半年ほど前のことでした。ちょうどサステナブルをテーマとした新機種『arrows N F-51C』の発売を予定しており、想いが一致いたしました」

 そう語るのはFCNTプロダクト&サービス企画統括部の外谷一磨さんだ。

 新機種「arrows N F-51C」では、リデュースに配慮した製品の長寿命化を図り、リユースに配慮した分離・分解しやすい設計を取り入れ、さらに、全体の約67%※で再生プラスチックなどのリサイクル素材を採用。今までにない環境配慮型の携帯端末をめざした。

 「これは日本のメーカーが日本国内の工場で生産しているからこそ実現できたことなんです。そういった取り組みを消費者の方に共感してもらえるように、何かやりたい。そう思っていたところに伊藤忠さんから『E-waste Compensation』のお話をいただいて、“あっ、これだ”となったんです」

 限られた資源を循環させるサーキュラーエコノミー。FCNTは、携帯電話の領域におけるサーキュラーエコノミーをつくることを一つの目標としていると、外谷さんは語る。

「ちゃんと循環していないからこそ、そこから外れたものがアフリカに流れていくわけです。それに対する“気づき”を業界全体が持たなければいけない。今回の伊藤忠さんとの取り組みが、アクションをおこすきっかけになればと思っています」

 世界の未来を変えるために、いまメーカーにもユーザーにも、エシカルな選択が求められている。

誰よりも“これから”を想うあなたに。
arrows N F-51C

身近なモノから地球を大切にしたい。そんな声から生まれたスマートフォン。リアパネルやスロットキャップなどには再生プラスチックを、カメラフレームやサイドフレームには再生アルミニウムを採用。全体の約67%※でリサイクル素材を利用している。さらに、新規に携帯1台を購入することで、アフリカで廃棄された携帯1台がリサイクルされる「E-waste Compensation」日本第1号でもある。2022年度グッドデザイン賞受賞。

※本体重量から、バッテリーやディスプレイなどの電気電子部品を除いた部品総重量に対する、リサイクル素材総重量の割合

提供:伊藤忠商事株式会社

photograph:Hirofumi Kamaya(right)  iStock(left)
design:Takayoshi Ogura

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source : 週刊文春 2023年3月23日号