3年前に父が急逝。直後に叔母は植物状態に。不動産を次々と売買し、彼は贅沢三昧の生活に――。
古都を南北に流れ、京文化の発展をもたらしてきた鴨川。その畔に佇む築20年余のマンションがある。4階の一室でベッドにうつ伏せで息絶えている男性Aさんが見つかったのは、2020年6月30日のこと。
当時、60代半ば。死後数日が経過していた。死因は虚血性心疾患。妻がAさんの生存を最後に確認したのは、約1週間前だった。
本来のAさんの住まいは京都市左京区、比叡山の麓にあった。和風の大豪邸で、約250坪の敷地には一族の邸宅が3棟建ち並ぶ。Aさんはこう言って家族のもとを離れ、独居していた。
「俺はもっと街の中に住みたいんや」
Aさんの願いを聞き入れ、18年に冒頭の中古ワンルームマンションを購入したのが、妹B子さんだ。彼女は兄に代わって父が打ち立てた家業の不動産会社を引き継いだ資産家だった。マンションの価格は約4000万円。50代の堅実な妹は、10歳ほど上の兄に生活費として月に40万円を渡していた。
だが、Aさんが孤独死した翌月の7月、今度はB子さんが突如として倒れ、病院に搬送された。一命は取り止めたものの、大脳の機能の一部が失われた植物状態に陥ってしまう。
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source : 週刊文春 2023年3月23日号