「町長は怒りをコントロールできない人なんです。職員は何か喋れば町長に叱責される。一部の“町長派”の職員からの告げ口も怖いので、業務中も何も言えません。まるで北朝鮮のような職場の雰囲気です」(奈義町役場の職員)

「子育て応援宣言のまち」を掲げる奈義町

 岡山県勝田郡奈義町。県北東部で鳥取県との県境に位置する山間のこの町は、日本が少子化対策を大きな課題とする中で、2019年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの推計人数。以下、出生率)の全国平均が1.36だったのに対して「2.95」という全国トップクラスの高さを記録し、「奇跡の町」と呼ばれるようになった。

「人口約5700人の町ですが、2014年に出生率が『2.81』と非常に高くなり、全国的に注目されるようになりました」(地元記者)

奈義町役場(記者撮影)

「子育て応援宣言のまち」を掲げる奈義町。ベテラン町議会議員が語る。

「05年の出生率は『1.41』と全国平均並み。当時は出生率のことなど意識もしませんでしたが、そこからきめ細かい対策を積み上げてきた成果が現れました。小中学校の教材費や高校生以下の医療費の自己負担無料、法定外の一部ワクチンの無料接種、高校生がいる家庭への1人当たり年13万5000円の就学支援金の給付(今年度より24万円に拡充)など、若い家族への住宅供給の施策も行っています。また、子どもの1割くらいを町内に駐屯する自衛隊の家族が占めており、出生率も押し上げている」

 米国や韓国、オランダなどの海外を含む自治体の訪問は年間50件を超え、今年2月19日には「異次元の少子化対策」を掲げる岸田文雄首相も訪問したことが大きく報じられた。岸田首相は同町の子育て等支援施設「なぎチャイルドホーム」などを視察し、地元の親子連れの話にメモを取りながら、「地域ぐるみで子育てに取り組む町づくりをしており参考になった」などと報道陣に語っている。

奈義町の「なぎチャイルドホーム」を視察し、子どもと握手を交わす岸田文雄首相(中央) ©時事通信社

 だが――。出生率「2.95」とは対照的な、「10人」という数字が今、この奈義町を揺るがしている。

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source : 週刊文春