クマによる人身事故が過去最多のペースだ。環境省によると4月から9月までの被害者数は15道府県で計109人に上り、月別統計を始めた2007年度以降の同時期比で最多を記録。被害は東北に集中しており、16日現在で秋田では42名、岩手では34名が襲われた。
「クマの目撃のピークは例年夏頃で、その後は減少に転じますが、今年は9月以降も出没が続いている。ここ数年、餌を求めて住宅地や市街地まで下りてくるクマが増えている」
そう語るのは、秋田県自然保護課の担当者。統計を見ても、人里での被害は山に比べて4倍。9日には学校やコンビニが立ち並ぶ秋田市内の住宅地で、男女4人がクマに襲われ、頭や顎、左耳などにけがを負った。
秋田県で長年クマを観察してきたNPO法人日本ツキノワグマ研究所の米田一彦氏がその原因を明かす。
「出産数の多かった21年に生まれた個体が、今年になって1メートルくらいに成長し、親離れして行動範囲を広げている。今年はドングリ類が凶作だったこともあり、少ない餌場を取り合う中で、若いクマから順に山を追われたと考えられる。人里に下りたクマは農家や人家の庭の栗を狙うことから、人身事故につながりやすい」
住宅地に現れたクマの駆除方法も問題だ。現在の法律では市街地での猟銃による駆除が禁じられているため、罠に頼るしかないが、
「市街地に下りてきたクマは人や車に遭遇して興奮状態にあり、罠にかかりにくい。追われたクマは神社や公園の森を伝って山へ帰ろうとするが、そんな時に通行人や子供が出くわすと襲われる可能性がある」(同前)
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source : 週刊文春 2023年10月26日号