イスラエルとハマスとの間で1カ月余にわたり続く大規模な戦闘。ハマスに次の一手はあるのか。3万人ともされる戦闘員をどのように勧誘しているのか。イスラエル最新兵器との闘いや資金調達法は――。徹底取材で迫る。

 ユダヤ教の安息日にまどろむイスラエル各地に無数のロケット弾が降り注いでから、1カ月余――。イスラエルとイスラム武装勢力「ハマス」との戦いは、10月7日の戦闘開始から現在に至るまで、いまだ停戦の兆しを全く見せない。

 イスラエルでは約1400人が殺害され、今もなお外国人を含む200人余がハマスに人質に取られている。また、ガザ保健当局は6日、ガザの死者数が1万人を超えたと発表。史上最悪の事態となっている。

 軍事大国イスラエルに大規模攻撃を仕掛けた、ガザを実効支配するイスラム組織・ハマス。小誌は今回、謎に包まれたこの組織の実態を徹底取材した。

(1)なぜこのタイミングだったのか

 2007年にパレスチナ・ガザ地区が封鎖されて以来、初めてイスラエル国内に大規模な侵入を果たしたハマス。類例のない被害をもたらしたこの軍事作戦は、なぜこのタイミングで強行されたのか。静岡県立大学国際関係学部講師で、パレスチナ問題を専門とする山本健介氏が解説する。

「そもそも今年、パレスチナ情勢は悪化の一途を辿っていました。今年に入ってからのイスラエルとパレスチナの戦闘でパレスチナ側の死亡者は、8月時点で約200名。これは00年代以降で最悪の数字です」

 情勢悪化の引き金となったのは、イスラエルで昨年、極右的とも評される第6次ネタニヤフ政権が発足したこと。エルサレムにあるイスラム教の聖地「ハラム・シャリーフ」の政治的主権をイスラエルがアピールしたことも一因だった。

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source : 週刊文春 2023年11月16日号