事件の発端は平成16年(2004年)3月、東京の大手広告代理店のBという社員が、行方不明になったことだった。家族は探偵も雇って捜していたようだが、Bの行方は杳として分からなかった。

 そんななか、捜査線上に浮かびあがったのが、Bの取引先の一つだった中小企業の経営者のIだった。

 行方不明者の捜索では、まず該当者の携帯電話や銀行の記録を調べる。もしその人物がすでに亡くなっているとすれば、携帯電話での通話が「その日」を境になくなる。また、銀行の入出金記録でも金の動きが止まるからだ。一方で行方不明者が生きている場合、携帯電話で誰かとは連絡を取り合っているものだし、生活のために銀行から金を引き出している。

 Bは後に殺害されたと分かる日を境に、携帯電話も金も全く使わなくなっていた。

 そんななか、その日の前後の関係者の動きを調べていたところ、浮かび上がったのがIだった。

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source : 週刊文春 電子版オリジナル