好評につき第3弾! 前回同様、俳人の池田澄子さんが、読者からの投稿約2000句より30句を選出。さらに、新年に鑑賞したい名句をご紹介いただきました。
去年今年貫く棒の如きもの 高浜虚子
大晦日の夜から元日になり、夜が明けて新年が始まります。それが「去年今年(こぞことし)」。この時の流れが「貫く棒の如きもの」であると。形あるモノは皆無です。初めてこの句に出会った時、なんて前衛的! と驚きました。そして俳句は虚子だ! なんて思ったのでした。
撫でて在る目のたま久し大旦 三橋敏雄
「大旦(おおあした)」は元日の朝。目を覚まし顔を撫でた時、瞼の上から触れたその独特な手触りに、目玉が在(あ)るという当然のことを意識した。そんな些事が大旦という季語によって、大きなおめでたい句に。「久し」に、長く生きてきたという感慨と感謝が込められています。
初暦知らぬ月日は美しく 吉屋信子
吉屋信子といえば少女小説家として有名ですが、素敵な俳句もたくさん詠んでいます。初暦は未だ何も書かれておらず真っ新(さら)。自分の知らないこれからの月日を「美しい」と言い切っているところが素敵です。また、「美しくあれ」という祈りでもあるのでしょう。
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source : 週刊文春 2024年1月18日号