早くも第4弾! たくさんのご投稿ありがとうございます。今回も、俳人の池田澄子さんが読者投稿より三十句を選出。そして、初夏に鑑賞したい名句をご紹介いただきました。
ぼうたんの百のゆるるは湯のやうに 森 澄雄
「ぼうたん」は牡丹の長音化した言い方。あの大きな花弁の質感に似合っているので、俳句でよく使われます。100ほどもありそうな花々がゆったり揺れる様が、たっぷりの湯のようだと詠まれました。GWの頃の暖かい昼間、牡丹を前に佇む作者もゆったりと揺れごこち。
さつきから夕立の端にゐるらしき 飯島晴子
飯島晴子の存在は素敵でした。上に媚びず下に威張らず毅然としておられて、私は信頼し憧れていました。「夕立の端にゐる」とは、夕立が来る気配をさっきから感じているということ。今にも降り出しそう、でもまだ降っていない。微妙な空模様の体感です。
目つむりていても吾を統ぶ五月の鷹 寺山修司
才能もそれ故の野心も強かったであろう若き修司の青春詠です。鷹は冬の季語とされているけれど、それは「鷹狩」の鷹を指してのこと。目をつむって心を鎮めようとしても、5月の空が思われ、木々のそよぎが聞こえ、胸中に棲む鷹が誇り高くあれと囁きかけるのです。
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source : 週刊文春 2024年5月2日・9日号