ウクライナ国防省は10月24日、北朝鮮兵の最初の部隊が、ウクライナ軍が越境攻撃を続けるロシア南西部・クルスク州に到着したと発表した。韓国の情報機関によれば当初の派兵規模は特殊作戦軍を含む約3000人で、12月には1万人を超える見通しだ。

 北朝鮮特殊作戦軍の主な任務は敵の後方攪乱だ。8〜12人単位で行動し、市街地のインフラを破壊する。今回はウクライナ軍後方にある兵站基地や交通網などの破壊を目指すだろう。

 一番近いイメージは、ベトナム戦争で米軍を苦しめたベトコン(南ベトナム解放民族戦線)兵士だ。

ロシアの装備を受け取る北朝鮮兵(ウクライナ文化情報省提供)

 通常装備で劣る北朝鮮軍兵士はゲリラ戦に訓練の重点を置いてきた。山中を高速移動できる体力、正確な射撃術、森林の樹上や地中などにじっと潜む忍耐力などに秀でている。爆薬などの扱いに慣れ、装備がなくなれば、身近な木や石を手製の武器に変える。

 韓国軍にその実力を知らしめたのが、1996年秋に日本海側の江原道江陵市で北朝鮮軍潜水艦が座礁したことで始まった浸透事件である。韓国軍はのべ150万人を投入して大掛かりな捜索を行った。逃走した北朝鮮工作員15人のうち、13人が射殺され、1人が逮捕されたが、1人はついに発見できなかった。韓国側は死者12人、負傷者27人を出した。

 当時の韓国軍将校によれば、工作員は山中を平均時速10キロで移動し、韓国軍兵士の額と胸を正確に撃ち抜いた。射殺された工作員は、逃走途中に書いたとみられる、ダムや発電所など重要インフラの位置を記したメモ用紙を所持していた。

 ただ、さすがの北朝鮮特殊作戦軍兵士も、今度ばかりは勝手が違うかもしれない。ウクライナ軍兵士が操るドローン(無人機)があるためだ。ウクライナ側が投稿したSNSなどの映像を見ると、ドローンはカメラや赤外線センサーを装備し、接近するロシア兵を見つけ次第、手榴弾の雨を降らせている。さらに、カメラで識別できる範囲で目標を見つけて攻撃するよう学習させたAIを使ったドローンも投入している。

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source : 週刊文春 2024年11月7日号