文禄堂荻窪店は電気自動車の夢を見るか

フットワークのいい本屋か？　カッコいい棚か？

　文禄堂荻窪店で一番目を引くポイントは、やはり、店頭の電動三輪自動車だろう。『三丁目の夕日』に出てきそうな、昭和感満載のオート三輪に見えるが、実は、最新テクノロジーの電気自動車を、移動書店用に改装したものだ。書棚をユニット化して、木製の箱と棚板を組み合わせてできており、箱を取り出せば平台やベンチ、テーブルにもできる。収納すればもちろん公道を走ることができるため、フットワークよくどこへでも出かけて、すぐに移動本屋を開業できる。普通に店頭にあるときは、いわばカッコいい棚として、意外と収納力があり、オススメ本やテーマ選書コーナーが展開されている。

　初出動は、1月下旬の週末、代々木公園でのイベント、本を手に取ってくれる人も多く、いい雰囲気だったそうだ。賑わいが演出でき、ひとりでも子供連れでも自分のペースで過ごすことができる、機材一式と商品がパッケージになっていて設営も比較的簡単、よくできている。

　今回開催の代々木公園は、荻窪からちょっと距離がある。今後はもっと地元のイベントへ出かけて行って認知を高め、店舗への還流も期待したいとのこと（荻窪近辺の商店街や学校、イベント関係者のみなさん、何か盛り上げたい場があれば、ぜひ文禄堂荻窪店にご相談ください）。

　荻窪は最近、文禄堂をはじめ、村上春樹ファンが集まる店として有名なブックカフェ「6次元」や今年1月に開店した話題の本屋「Title」など、本にまつわるスポットが増えており、本屋ウオッチャー的には注目のエリアだ。例えば、電動三輪自動車の3面の棚を使って、本の街荻窪を盛り上げる企画ができたらというアイディアも出ているらしい。

　広く開かれた店にあって目を引くアイコンであり、文字通りフットワークのいい書棚である電動三輪自動車を活用して何ができるか、地域に根付いたあゆみBOOKSチェーンにとっても、出版流通の雄、日本出版販売にとっても、勝負はこれから、まだまだ相乗効果を上げるところに至っていない。2月中旬には文禄堂ブランドでイベントスペースを備えた高円寺店もオープンするという。文禄堂荻窪店も、カッコいい棚に終わらない、本の街荻窪を走り回る活躍を期待している。