「総理は早く結論を出して(4月8日からの)訪米にそなえたい気持ちが強かったのでしょう。だから、私にも真実を確認するためにやむをえず電話をかけてきて、それで済んだ、という形をつくろうとしたのだと思います」
4月18日、森喜朗元首相が都内の事務所でノンフィクション作家の森功氏のインタビューに応じた。
その中で森元首相は、自民党の政治資金パーティを巡る裏金問題について、4月上旬に岸田文雄首相から電話で聴取をされた際のやり取りについて詳細に明かした。
「岸田総理からの電話は、『例の問題について、森先生の話を聞いたかどうか、質問が集中しますので、含みおいてください』というような内容です」
「私が裏金作りを始めたと言っているのは誰なんだ」
岸田首相は、これまでマスコミ各社の取材などに対し、森元首相には、裏金作りへの関与について、直接尋ねたと説明してきた。
しかし今回、森功氏が、「(岸田首相から)『キックバックを知っていたか』、あるいは『裏金システムそのものを作ったのではないか』という質問はなかったのですか」と確認すると、森元首相は「はい」と認め、上記のように詳しい内容に踏み込んだやり取りはなかったと答えた。
岸田首相としては気遣ったつもりかもしれないが、調べる立場の自民党総裁として事実関係をきっちり問いただすべきだろう。森元首相は次のように補足した。
「ただ岸田総理も、私の関与がなかったことについては、だいたい分かっているんです。電話があったのは訪米前が初めてではありません。私に聞けと野党が騒ぎ始める前から、総理には『私の会長時代には、派閥ぐるみの裏金作りなどありませんでした。それは私がいちばんよく知っています』と話してきました。(中略)もし国会に呼ばれたら、『森が裏金作りを始めたと言っているのはいったい誰なんだ』と言いたいです」
「強いてお目にかかることはありません」
岸田首相が4月上旬に改めて電話をかけてきた理由について、冒頭のように訪米にそなえたい意向が強かったのだろうと推測した。
「総理はこう言っていました。
『私から森先生に電話した事実を言わなければならない事態になれば、それを公表させていただきます。それまでは、私から電話があったことをおっしゃらないでください』
私は『承知しました』とだけ答えました。あとは『ご体調はいかがですか』とか『強いてお目にかかることはありません』というようなことを言われました」