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真魚 八重子
2017/01/27

お引っ越しシーズン直前 観ておくべき「事故物件」映画は?

転宅してから後悔しないために……

genre : エンタメ, 映画

 昔、引っ越しで部屋探しをしていたとき、なかなか懐事情と折り合いがつかず困っていたところ、不動産屋がとっておきの割引物件を紹介してくれました。ほんとは7万4千円が、6万7千円でOKとのこと。駅まで徒歩5分だし、交通量の多い大通りが近いわりに、小道を数軒抜けたアパート自体はとても閑静。これは好条件と思い、さっそくその部屋に住み始めました。

©iStock

 ただ、老人である大家がお隣に住んでおり、引っ越し当日になって突然、室内に「異性の出入りは禁止」と書かれた紙が貼られていたり、アパートの玄関が大家宅から丸見えなので、仕事の出退勤の時刻などもどうやら監視されている様子。

 家賃は大家に手渡ししていたのですが、ある日改めてくぎを刺すように「男女関係で揉められると迷惑なんでね、男は呼ばないでね」と、呼んでもないのに言われました。

「前に隣のアパートでさ、あんたの真向かいの部屋でガス心中があったんだよ。そんとき大変だったからさ」。

(ジジイ……、いまさら言うなよ)と思いましたが、確かに隣接するアパートの部屋は、扉を開けた目の前という近い距離にありました。それでどうやら家賃が安かったんですね。でも、自分の部屋でダイレクトに起こった事件でもないし、狭い日本では長い年月のうちに、どこで誰が死んでるかわかりゃしないと思っているので、心中の件は全然気にしませんでした。むしろ住人の出入りを見張ってる大家の方が事故っていう感じで、結局2年ほどでそこは出てしまいました。

誰彼を問わず場所自体に怨念が宿る日本的ワビサビ

 事故物件への一番の不安は、それが幽霊部屋に発展している恐怖でしょう。去年公開された映画『残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―』(小野不由美原作、中村義洋監督)は、年月による呪いの拡散を扱っています。

©2016「残穢-住んではいけない部屋-」製作委員会

 物語は、怪談雑誌に読者投稿を基に短編小説を書いている「私」(竹内結子)が、久保(橋本愛)という女子大生から「住んでいる部屋で変な音がする」という手紙を貰ったことに始まります。幽霊がいるからには、怨みとなった元の出来事があるはず。しかしそれを辿っていくと、ルーツは思いがけぬ事件にあり、とばっちりのように心霊の被害者となった数も、相当数にのぼることが判明していきます。

 怨念の理由。ただ意味もなく仇を成す幽霊はいなくて、祟りを残すには相応の理由があるという発想が、じつに日本的です。非業の死を遂げた者が、その原因をもたらした者や一族に祟っていく。そしてその怨念で死んだ者もまた、遺恨を残して亡霊と化していく循環がわかります。でも次第に、誰彼を問わず場所自体に怨念が宿って、災いをもたらしてしまう「風化」も、日本的ワビサビな気もします。

©2016「残穢-住んではいけない部屋-」製作委員会

 その点、ハリウッドのホラーは恨みつらみの個人的事情より、悪魔や悪霊というざっくりした理屈のないものに集約されていきます。悪魔憑きや悪霊に祟られるのは、「理由なく降りかかった災い」であり、その理由のなさが怖さとなります。

ポルターガイスト現象を描いた作品といえば

『ソウ』で知られるジェームズ・ワン監督の、「死霊館」シリーズは評価も高いヒットシリーズで、実在の超常現象研究家エド&ロレイン・ウォーレン夫妻が経験した、特に恐ろしかった事例の映画化です。実話を基にした恐怖描写と、70年代当時のムードを再現した雰囲気、そしてウォーレン夫妻の夫婦和合ぶりという、この緩急が本シリーズの人気の理由でしょう。

『死霊館 エンフィールド事件』©ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

 昨年公開された3作目の『死霊館 エンフィールド事件』も、怖いし意外に感動もあると反響を受け、昔のオカルトホラー的な王道的演出も好評を博しました。モデルはロンドンのエンフィールドに住む、母親と4人のこどもの母子家庭が、ポルターガイスト現象に襲われた有名な怪現象です。現在では、次女をメインに、長女も手伝った思春期のいたずらと判断されている話なんですけど、映画は実直に悪霊の仕業として扱い、ウォーレン夫妻が強敵に立ち向かう内容になっています。

『死霊館 エンフィールド事件』©ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

「死霊館」シリーズの2作目は、1作目の『死霊館』の前日譚である『アナベル 死霊館の人形』(14年、ジョン・R・レオネッティ監督)。アナベルと名付けられた人形に悪霊がとり憑き、ジョンと妊娠中のミアという若い夫婦に災いをもたらします。

 途中、夫婦はあまりの恐ろしさから、神父に人形を預かってもらうことにします。そして神父は車で教会に人形を運んでいくのですが、その移動中に野球中継をラジオで聞いている演出に、椅子からずり落ちそうになりました。カーラジオに異変が生じる恐怖描写の前振りではあるんですが、宣伝担当者に「呪いの人形運んでるのに、野球中継聞く?!」と言ったところ、平熱で「ほんとに聞いてたらしいですよ」と返されました。恐怖描写は盛りに盛ってるだろうに、そこは事実に忠実って、おかしいでしょ! まあ、実話の映画化はどこにリアリティを持たせるか、難しいなあと思った次第でした。

INFORMATION
 

『残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―』

DVD&Blu-ray好評発売中
価格 4200円(税抜)
発売・販売元 ハピネット   
©2016「残穢-住んではいけない部屋-」製作委員会

INFORMATION
 

『死霊館 エンフィールド事件』

ブルーレイ&DVDセット(2枚組)
3,990 円+税
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
映倫区分:PG12

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