文春オンライン

連載僕が夫に出会うまで

ゲイの僕が悩みに悩んで、母にカミングアウトを決意するまで

僕が夫に出会うまで #28

2019/05/14
note

カミングアウトのメリットとデメリットを考えてみた

 まずは母にカミングアウトしようと思った。なぜなら、母はいつも味方でいてくれたから、理解してくれる可能性が一番高いと考えた。

 だけどもまだ、自分の中で悶々としている。言うべきか、言うべきでないか。どちらが正しい生き方なのか判断ができずにいたのだ。そこで僕はイマジネーションを働かせた。

 親にカミングアウトした未来(メリットとデメリット)と親にカミングアウトしない未来(メリットとデメリット)を挙げていくのだ。

ADVERTISEMENT

 カミングアウトをしたら、間違いなく母は落ち込み、悩むだろう。もしかしたら、自分の育て方のせいだと、自分を責めるかもしれない。何年も何十年も。いや、それどころではなく、落ち込みすぎて、自殺してしまったらどうしよう。耐えられない。そこまでならなくても、もしかしたら縁を切られるかもしれない。

 メリットは今後自分を偽らなくてすむことだ。認めてくれた場合、彼氏を紹介したりする事ができるかもしれない。

 

 カミングアウトしない場合、親が傷つくことはない。このまま愛されて生きていくことができる。デメリットは自分を偽り、ずっと隠しゴトをしている気分でいつづけることがイヤだ。彼氏を紹介することもなければ、永遠に「いつ結婚するの?」と聞かれ続けるかもしれない。そして、僕が独り身だと心配しながら親は死んでいくのだ。

 どっちもどっちだった。

「同性愛=普通じゃない」を変えていきたいと思った

 次は、問題を、もっと広い視点から考えてみることにした。

 そもそも、なぜ親にカミングアウトをすることを、躊躇しているのだろうか。僕がゲイであることは別に悪いことではないし、誰の責任でもないはずだ。でもカミングアウトをすると、親を傷つけてしまうから躊躇しているのだ。

 ではなぜ、カミングアウトされた親は傷つくのだろうか。それは同性愛=普通じゃない。良くない。可哀想。気持ち悪い。変態というネガティブなイメージがあるからではないだろうか。そのイメージを変えていきたい。僕は将来、ゲイとして幸せな家庭を築くのだから。

 それならば、ごちゃごちゃした問題は置いといて、僕にとって、一番素晴らしい未来はどんなものだろうと想像しよう。僕にとって最善の未来、それは、僕の隣にはステキな旦那様がいる。お正月には彼の実家へ、お盆には僕の実家へ帰省するとかを話しあって決めている。家族の行事(葬儀や結婚式)にも、僕の隣には当たり前のように旦那様がいる。お互いの家族や友達に支えられ、旦那と2人で生きている。これが僕の一番の理想なのだ。

 そうと分かれば、もう迷う必要はない。自分の一番の理想が現実となる様に、努力するしかないのだから。腹が決まったと思った。まずはお母さんにカミングアウトしよう!

写真=平松市聖/文藝春秋

(続きは5月21日(火)に掲載予定)
(この連載を最初から読む)

僕が夫に出会うまで

七崎 良輔

文藝春秋

2019年5月28日 発売

ゲイの僕が悩みに悩んで、母にカミングアウトを決意するまで

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー