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連載僕が夫に出会うまで

セーラームーン好きの僕は「ぶりっ子だから」いじめられたのか

僕が夫に出会うまで #3

2019/02/14

(前回までのあらすじ)小学校2年生の頃から、周囲の子に「オカマ」と呼ばれるようになった僕。ある日、担任の先生は僕を黒板の前に立たせ、クラスのみんなにこう問いかけた。
 

「七崎くんって、『オカマ』なのかな?」


 議論の結果、僕は「ふつうの男の子」であるという結論が出て、先生は笑顔で「もう、大丈夫だからね!」と言ったが――。2016年に夫と結婚式を挙げた七崎良輔さんが、夫に出会うまで、何を考え、何を感じて生きてきたのか綴るエッセイ。隔週連載。

 

#1「とある夫夫(ふうふ)が日本で婚姻届を出したときの話

#2「『ふだんの僕は変なんだ』と思わせた、大人たちの恐ろしい善意

 それからのぼくは、全くもって、「大丈夫」ではなかった。先生のおかげで、自分は「ふつう」ではない人間なのだと、気づかされてしまったからには、どうすればふつうの男の子っぽくできるかを、四六時中考えていなければならなかった。

 歩く時も、座る時も、喋る時も、常に周りの目を気にして「ふつうの男の子」を装った。ただ、好きなアニメや、興味のあるものだけは、変えることが、どうしても出来なかった。

 

 ぼくが大好きな『美少女戦士セーラームーン』というアニメは、3つ下の妹がいたのでなんとか一緒に観ることができた。だけど、女の子の観るアニメだから、ぼくは、セーラームーンが大好きなことを誰にも話さなかった。ぼくが1人でセーラームーンを観ていると、父や母が少し悲しそうな目をするのを知っていたからだ。

 だけど、ぼくにはどうしても、なんとしてでも、欲しいものがあった。それは、セーラームーンが敵を攻撃するときに振りまわす、ステッキのおもちゃだ。

 そんなものを欲しいと言ったら何を言われるか、どう思われてしまうのか、と考えると恐ろしく、その想いは、小さな胸にしまい込んでいた。

 しかしぼくには、セーラームーンのおもちゃを手に入れるための、とっておきの秘策があったのだ!

年に1回のチャンスに全エネルギーをかけた

 もうすぐクリスマス。クリスマスにはサンタクロースという親切なおじいさんがやって来て、僕が1番欲しいものをプレゼントしてくれる。年に1回のチャンスに、ぼくは全エネルギーをかけていた。

 12月に入ると、ぼくの家にも、小さなクリスマスツリーが飾られた。ぼくは毎朝、目を覚ますと、クリスマスツリーの前に正座をして、手を合わせ、祈りを捧げた。

 

「セーラームーンのおもちゃが欲しいです、セーラームーンのおもちゃをください、サンタさん、お願いします!」

 もちろん言葉にはせず、心の中で、強く念じた。この念が、クリスマスツリーを通じて、サンタクロースへ届くと信じていた。