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「サンタさんに、何をお願いしたの?」

 そのころ、母は焦っていたようだ。何日にもわたりぼくに質問をした。「サンタさんに、何をお願いしたの?」とか、「何が欲しいか、お母さんからサンタさんに伝えてあげるよ」と。それでもぼくは絶対に言わなかった。女の子の物を欲しがって、母を悲しませたくなかったからだ。

「自分でちゃんと伝えてるから大丈夫!」

 ぼくは、なるべくやんわりと、母の申し出を断ったが、それでも母は引き下がらない。

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「どんな事に使うものなの? テレビをつかって遊ぶもの?」

 ぼくは首を振った。

「動くもの?」

 ぼくは少し考えて、また首を振った。

 

「それを使うと、どうなるの?」

「魔法みたいなことがおこるよ」

 ついポロっと出た言葉だった。シマッタ! と思い、これ以上何も答えないでおこうと思った。母は「どんな魔法? 飛ぶもの? 走るもの?」と聞いてきたが、ぼくはこれ以上何も話さなかった。

いよいよクリスマス当日

 クリスマス当日、目を覚ますと、枕元には、緑色の包装紙に包まれたプレゼントの箱が置いてあった。ぼくは飛び起きて、その箱を大事に抱え、クリスマスツリーの前に急いだ。いつものように正座をして、合掌。

「ありがとうございます、サンタさん! 本当に、ありがとうございます!」

 起きてきた母が、プレゼントを開けてみろと言ったが、ぼくは首を横に振った。プレゼントを開けるにはまだ早い。母が見ている前で開けてしまうと、ぼくがサンタさんにセーラームーンのおもちゃをお願いしたのが、バレてしまうと思ったからだ。

「好きにしなさい」と言って、母が朝ごはんを作るために台所に向かったとき、ぼくは急いで食卓テーブルの下にもぐりこみ、大人の目の届かないそこで、丁寧に包装紙を開いた。