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連載僕が夫に出会うまで

「親を悲しませるなんて自己中じゃないか」ゲイであることを母にカミングアウトするべきか 悩んだ末に出した1つの答え

『僕が夫に出会うまで』より#1

2021/09/02

 2016年10月10日に、夫と結婚式を挙げた七崎良輔さん。自分がゲイであることを認めた瞬間から、彼の人生は大きく動いていきます。さまざまな出会いや別れ、喜び、悲しみ、怒り──幾多の困難を乗り越えて、生涯のパートナーに出会い、そして2人は大きな決断を下しました。

 同氏による『僕が夫に出会うまで』(文藝春秋)の文庫発売に合わせて、家族へのカミングアウトについて明かした記事を再公開します。(全2回の1回目/後編を読む)(初出2019年5月21日、肩書き、年齢等は当時のまま)

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 だが、悩みぬいたはずのその決心は、周りの意見に簡単に振り回されてしまうこととなった。次の帰省で親にカミングアウトをする事を周囲の人に話すと、反対する人が多くいたのだ。

 

「なんのために親にカミングアウトするの? 親を傷つけるだけじゃないか」

「自分を偽らなくて済むためだけに、親を悲しませるなんて自己中じゃないか」

「いい人ができて、日本で同性婚が認められてからカミングアウトした方がいいんじゃないか」

「私が息子からカミングアウトされたら、ショックすぎる。ななぴぃは友達だからいいけど、それが息子だと考えたら知りたくはない」……。

 みんな僕を想って言ってくれているのはわかっている。だけど、そんな話を聞いていると、まるで自分の親を傷つけてでも、自分の生きやすさや、自分の幸せを優先させる悪人のように、自分が思えてきてならなかった。ただ、ゲイに生まれたことを、親にも知ってもらいたいだけなのに。

 親にカミングアウトしようと思った僕は、自己中なのか。たしかに、自分の理想の未来のために、親を傷つけるなんて、自己中としか言いようがないのかもしれない。

年上のゲイの人にも話を聞いてみることにした

 一度は母親へのカミングアウトを決意した僕だったが、またもや何が正しいのかわからなくなってしまった。僕はもっとたくさんの人の情報が必要だと思い、ネットで見つけたゲイ向けのイベントに参加をして、年上のゲイの人にも話を聞いてみることにした。ありがたいことに、そういったコミュニティが多くある時代に僕は生きているし、この頃の僕はそういった集まりに、抵抗なく参加することができるようになっていた。