書籍「僕が夫に出会うまで」
2016年10月10日に、僕、七崎良輔は夫と結婚式を挙げた。
幼少期のイジメ、中学時代の初恋、高校時代の失恋と上京、
文春オンラインでは中学時代まで(#1〜#9)と、
自分がゲイであることを認めた瞬間から,
物語の続きは、ぜひ書籍でお楽しみください。
実は僕も、中学時代に彼女を作った事がある。それは自分への挑戦でもあったのかもしれない。
なんせ自分をゲイだとは思ってもみなかったので、男は女と付き合うものだと無条件に信じ込んでいたし、僕に彼女ができれば、司と秀美と僕の三人デートで僕だけ虚しい想いをする事はなくなり、歴(れっき)とした「ダブルデート」として司と一緒にいられる時間が増えるという計算もあった。
だから「さくら」との付き合いも、僕にとっては「好きだから付き合う」という純情なものではなかった(もちろん人としては好きだったが)。
「スケバン」のような格好をして、破天荒だったさくら
付き合う事になったのも、さくらの強い「押し」だったと記憶している。校内でも目立つ存在だったさくらはいつも元気いっぱい、破天荒。女子達がどれだけスカートを短くして、ルーズソックスをゆるゆるにして履くかで躍起になる中、さくらだけはくるぶし丈の靴下を履いて、スカートをくるぶしまで長くして穿き、まるでいつかの時代の「スケバン」の様な姿で毎日廊下をガニ股で歩いているような女子だった。
彼女ができたといっても、僕の気持ちはさくらにはなく、司に一直線だ。
さくらの唇や、髪や、肌なんかよりも、司の脇に顔を埋めたいと思っているのだから、さくらにとって僕は物足りない彼氏なのは当然だ。
手を繋ぐのも、僕のファーストキスもさくらから半ば強引にされたように思う。キスの時は二人ともお酒の力を借りた。
喧嘩の火種だった「送る・送らない問題」
よく喧嘩になったのは「送る・送らない問題」だ。「彼氏と彼女」「男と女」にはそれぞれ役割があり、彼氏が彼女の家まで送っていくのが習わしのようだったが、僕はそれがどうしても許せなかったのだ。
「今日はさくらが僕を家まで送ってよ。僕、お腹すいちゃったから早く帰りたいの」とさくらに申し出た。さくらは、最初は承諾したものの、後から「やっぱりおかしいだろ!」と思ったのか、喧嘩になった。それから、なんだか不穏になり、二人の短い付き合いは終わった。
さくらとは一回キスをしただけで、その先はなにもない。司とのダブルデートも叶わなかった。さくらとは中学卒業後、高校も別々で、それから疎遠になっていたが、実は何年か前に進展があった。