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連載僕が夫に出会うまで

男友達に片思いした僕が、彼の部屋に行ったときに起きた出来事

僕が夫に出会うまで #8

2019/03/14

連載「僕が夫に出会うまで」

 

2016年10月10日に、僕、七崎良輔は夫と結婚式を挙げた。幼少期のイジメ、中学時代の初恋、高校時代の失恋と上京……僕が夫に出会うまで、何を考え、何を感じて生きてきたのかを綴るエッセイ。毎週連載。

 

(前回までのあらすじ)親友で初恋の相手である司に、秀美という彼女ができてた。司と秀美が二人きりにならないよう、デートにもついていった僕だったが、二人が知らぬ間に身体の関係を持ったことを知ってしまう。

 

傷ついた僕は、久しぶりに三人で行ったカラオケで、「世界に一つだけの花」の歌詞をきっかけに号泣する“事件”を起こしてしまったのだった――。

 

(#1「とある夫夫(ふうふ)が日本で婚姻届を出したときの話」を読む)

幼少期編#2#3)を読む)

中学生編#4#5#6#7)を読む)

(前回の記事「初恋の相手とその彼女の前で起きた『世界に一つだけの花』号泣事件」を読む)

 僕は、カラオケ号泣事件後、二人から距離を置くようにしていた。三人でいると、自分がおかしくなってしまいそうだ。

 

 僕と秀美が崖にぶら下がっている。崖から落ちたら死ぬ。

 司はどっちか一人しか助けられない。

 僕は司の友達として、「二人で幸せになれよ」とか言って、自ら落ちるべきなのかもしれないが、絶対嫌だ。足を使って、司の見えない所で、秀美を蹴り落としたい。

 もし司が秀美を助けて、僕が崖から落ちることになっても、「幸せになれよ」なんて言わない。きっと僕は「二人とも、呪うからね」と言って落ちていくだろう。

 日々、こんな妄想を膨らませていた、卒業間近のある日だった。

久しぶりに入った司の部屋で

「七崎、今日ヒマ? うちに遊びに来ない?」

 司に声をかけられるのは久しぶりな気がした。

「ヒマだけど。秀美もいるの?」

 僕は遠慮がちに聞いた。

「秀美は別の約束があって今日はだめなんだって」

 秀美に断られたから僕を誘いにきたのは明白だが、嬉しい。

「そうなんだ。じゃあお邪魔する」

 

 司の部屋に入るのも久しぶりだった。司の制服と同じ匂いがする部屋だ。司はブレザーを脱ぎ、ハンガーにかけた。司はいつもキチンとしている。本も、CDも、本棚にキッチリ収まっている。

 僕は制服のまま、司のベッドに仰向けになって天井を眺めていた。するといきなり、司が僕にまたがり、覆いかぶさってきたのだ。