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「いいとも!」の前説でタモリさんに一度だけ褒められた理由――岩井ジョニ男の生き方

『幻の哀愁おじさん』岩井ジョニ男インタビュー #1

2019/06/16

genre : エンタメ, 芸能

note

タモリさんに教わった「他人に乗っかる」ということ

——本にも出てきますが、ジョニ男さんはタモリさんの付き人をやってらしたんですよね。

ジョニ男 そうなんです。タモリさんくらいになったら、もう色々自分がやりたいようにやってるって思うじゃないですか。だからすごくびっくりしたのを覚えてます。タモリさんに「なんで番組について意見を言わないんですか?」って聞いたことがあって。そしたら「どう考えたって向こうの方が情熱があるだろう、ディレクターとかそういう人間の方が、自分よりも。どうしても自分は楽する方にいきたがるから」って答えて。

——なんか、とてもタモリさんっぽい。

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ジョニ男 ですよね。僕もそれを聞いて、あぁなるほどなと思って。だから僕も「情熱でこられた時は乗っかろうかな」と思うようになりました。だんだん年齢とともにいろいろなことが億劫になる。そこを上回る好奇心をぶつけてくれる方がいるなら、全くインスタもわからないけどやってみようと。それはタモリさんに教わったことです。

 

——インスタのジョニ男さんは「演者」ということですね。

ジョニ男 そうです。イラストレーターの師岡(とおる)さんが「公衆電話で子供の合格祝いの報せを聞いてます」とか、演出してくれる。僕としてはやってても楽しいですし、なんか面白いですね。自撮りみたいなのはできないから(笑)。自撮り世代じゃないので。

——身を任せている。

ジョニ男 そうです。「自分が思っている自分よりも、人が思っている自分の方が正しいと思う」というのが「戦略」なのかもしれない。

——名言……。

ジョニ男 そうですか(笑)。「演者」って言うとかっこいいですけど、本当に日常の風景。変な顔もしてます。後から見て「俺酒飲んだ時こんな顔をしてるんだ……」って思い知ることもある(笑)。

今までSNSをやらなかった理由

——今までSNSを一切やってこなかった理由はなんですか。

ジョニ男 恥ずかしい。ものすごく恥ずかしいんですよ。恥ずかしがりなんです。

——『さんまのお笑い向上委員会』でのご活躍などを見ると、あまりそういう風には見えないです。

ジョニ男 もともとものすごいファンだったんです、『向上委員会』の。最初にやったスペシャル放送なんて500回ぐらい観たかもしれない。あの番組がレギュラーになるということを知り、呼ばれてもいないのに初回の収録に行ったくらいですから。差し入れ持って、イカフライを。さんまさんが好きな、5枚100円とかで売ってるあの駄菓子です。そしてエレベーターの前で、写ルンです持って、中にいるさんまさんに「パシャパシャパシャ」「パパラッチです」「やめて、やめて」「スター、新番組おめでとうございます」なんて言って。

——(笑)

ジョニ男 そんなこんなで「さんまさんが「ジョニ男せっかく来たからモニター横でおらせようか」と情けをいただきまして(笑)。

——そこからあの名物「モニター横」が始まったわけですね。

ジョニ男 一番初めはカバン持って、メモ帳持って、ほんとに見学してたんですよね。それが今やモニター横からスターがどんどん生まれていって(笑)。でもね、向上委員会って別に台本もないんですよ。通常ネタの時はネタをやりますけれども、そうじゃない時は誰が出てもいいし、出なくてもいい。そこで1回ウケたら「もういいや」って思っちゃうんです、僕。

 

「あの人だけを笑わせよう」という考え方

——「もう自分の仕事は終わった」という?

ジョニ男 そう、1話30分。収録はめちゃ長いですけど。でもこの回はさっきウケたからもういいやって。これ結構(ずん)飯尾さんにも怒られるんです。「だめだよ、もっといかなきゃ」って言われるんですけど。なんかね、そういうせこい性格というか。

——省エネ的な。

ジョニ男 他にまだ喋ってない人もいるから、自分はもういいやって(笑)。必要なのは勇気だと思うんです、どんな仕事でも。ただその勇気をどうやって出せばいいのかがわからなくて、結構悩んでた時期もありました。

——勇気の出し方、知りたいです。

ジョニ男 人によって違うとは思うんですけど。僕がある時「あっ、これだったらいける」って思ったのが、ひとり、この中の誰かひとりを笑わせるためにいこうと。番組の向こう、視聴者やリスナーをとなると、もうわけわからなくなるので。あの人だけを笑わせようということをやれば。それは基本的には飲み屋の考え方なんです。

——飲み屋の考え方!?