文春オンライン

連載尾木のママで

高齢者の「定義変更」にご用心!

2017/02/02
note
イラスト 中村紋子

 日本老年学会などが、六十五歳以上とされている高齢者の定義を七十五歳以上に引き上げるべき、と提言したわね。聞いた瞬間はすごく嬉しかったの。ボクら団塊の世代の頭脳と筋力のパワフルさが定義変更につながった、ってね。この間もボク、講演で屈伸運動を披露したら「オーッ」と喝采されたもの。「高齢者」は「若い」と言われると舞い上がるのよ(笑)。

 実際、内閣府の平成二十四年の調査では、提言はなるほど、と納得させる結果が出ている。まず健康状態。「良い」「まあ良い」と答えた人が六十五歳から七十四歳で過半数、「普通」も三割を超え、合わせると「高齢者」の八割以上はまあ元気だ、という自覚があるようね。

 次に「生きがい」。同じ年代で「十分感じている」「多少感じている」人がこちらも八割を超えているわ。

ADVERTISEMENT

 更に面白いのは、五十五歳以上を対象にしたこの調査で、約六割の人が「六十五歳を超えても働きたい」と考えている。これじゃ定義変更を提言したくなるのも無理ないわね。

1月5日、高齢者の定義変更について日本老年学会などの関係者が記者会見を開いた ©共同通信社

 ただし、だからといって年金受給年齢をこれ以上引き上げたり、高齢者医療費をどんどん抑えつけたりする動きには目を光らせないとね!

 日本の企業には定年制をとっている会社が九割以上、中でも六十歳定年のところが八割を占める。再雇用されても給料は半額に下がったりして、シニアの雇用環境の整備はまだまだなの。また六十五歳以上になると健康状態の個人差も大きくなってくるの。若い頃粉塵を吸い込むような激しい肉体労働をしていた人達は定年後ガクッと弱ったりすることがある。元気な人ばかりではないことは決して忘れてはいけないわ。

 ボクが若い頃から奮闘してきた教育界も未だにヒドいことばかり。七十歳になっても、まだまだ死ねないという使命感がボクの元気の素かも。

高齢者の「定義変更」にご用心!

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー