教え子たちが巻き込まれた軽井沢のスキーバス事故から、十五日でまる一年。法政大学のボクのゼミでは、四人が命を落とし、六人が心身に重い傷を負った。この一年、彼らのことを忘れた日はありません。
メディアからの取材も相次いだけど、「一年経って、今の学生さんの様子は?」といった紋切型の質問ばかり。でも当事者にとって事件はまだ終わっていない。現在進行中なの。つい先日も何度目かの再手術を受けた学生が何人もいる。あまりの激痛続きで感覚が麻痺したり、悲しみの感情が消えたり……。ケガが治っても「怖くてバスに乗れない」など生活に支障も出ている。それでも社会復帰するために頑張っているんです。
当事者には、世間と同じ日常生活の時間軸と、あの日以来ピタッと止まってしまった時間軸の二つがある。ボク自身、そのことを改めて実感したの。とりわけご遺族の心痛は深く、我が子が亡くなったことをまだ受け入れられずにいる。「うちの子に連絡ができなくなる」と皆さんスマホも解約していないし、お墓にお骨を納めていないご家族もあるの。
バスに乗っていなかったゼミ生も立ち直れていない。「十五日を迎えるのが怖い」と言っていた学生が何人もいて……。その心の傷の深さに、生涯彼らにしっかり寄り添って生きていかなきゃと改めて誓った。
この事故を受けて、安全確保を怠った業者への罰金が大幅にアップするなど、対策が打ち出された。国の監査も強化すると言うけど、その実効性を定期的にチェックしないと! バス会社はもちろん、その法令違反を見落としていた政府の責任は重大よ! これは単なる事故ではなく、規制緩和、格差社会、長時間労働など構造的な問題。命を大切にしない社会に怒りが湧いてくるわ。そこを訴えるのがボクの使命かもしれない。一年を迎えそう思ったの。