十二月十日、東京地裁が画期的な判決を下した。川口市立中学校でいじめに遭い不登校になった元男子生徒が、ネットの掲示板に実名をさらされプライバシーを侵害されたとして、プロバイダー三社に発信者の名前などの開示を求めた裁判で、情報開示命令が出た。今回の判決で、書き込んだ側に責任があるということが法律で改めて明確にされた。
元男子生徒は中一の頃から部活で仲間外れや暴言・暴力を受け、不登校になり自殺未遂まで起こすようになった。一七年十月頃からはネット掲示板で学校名入りで元生徒のいじめが話題になり、実名やあだ名をさらす匿名の書き込みが相次ぎ、その数は二千超。およそ子供が書いたとは思えぬ表現や事情を知る大人によるものかと疑われる中傷もあり、元生徒も家族も深く傷つけられ続けてきた。悪質極まりない。
ネット環境が普及した現代では、子供だけでなく大人社会でもネット上の匿名書き込みという暴力が横行、時には人を自殺にまで追い込んだり、人生を変えてしまうことさえある。現実世界で安心して生活する権利も侵害されている。これまでも二〇〇二年にプロバイダ責任制限法が施行され、発信者情報の開示請求は法律上はできたけれど、提訴のハードルは高く、多くの被害者が泣き寝入りしてきた。
母子が提訴に踏み出し闘い続けたのは、書き込んだ人に「身元を明かさず人を傷つけた悪質性に気付いてほしい」という思いと、「ネットいじめを減らしたい」という切望から。今回の訴訟で、「匿名だから」と見逃されてきたネット上の「犯罪」を許さない道筋ができたのは、希望の光ね。
ネットへの書き込みは法律でも裁かれるのだと学校や家庭で子供たちに伝えて欲しい。そして、子供と共に、ネット社会でのモラルを構築していけるスタートラインに立ったことを肝に銘じたいわね。