今年は大女優・樹木希林さんが亡くなって、その死生観も話題になったわね。普段は子供や若者の問題に目を向け元気に活動しているボクだけど、古希を越え、ふと「終活」の二文字が頭をよぎることも……。そんな中、ある番組収録で、老人ホームに一泊二日で入所する貴重な体験をさせてもらった。
ボクが泊まったのは介護付き有料老人ホーム。看護師・介護士が二十四時間常駐し、入所者約百人に対し職員数は八十人近い。ホームの皆さんが一度に集まれる大きな食堂に入ると、「尾木ママ、テレビ観てるよー!」と大歓迎♥
お風呂もキレイで食事も美味しい。職員の方は皆さん親切で、「時々、泊まりに来たい」って思うくらい快適だったわ。
宿泊した夜、廊下で寝転ぶご婦人が。職員さんが声をかけると「ここで寝るの!」と頑として動かない。でも職員さんは少しも慌てず「そうなんですね、ここで寝たいのよね」と彼女の気持ちを丸ごと受けとめ、ほぐしていかれる。所長さんの方針で、全職員が入所者の気持ちをまずはそのまま否定せず、一人ひとりを「個性」として受け容れるのですって。高齢になると病気や衰え、孤独感などから、感情が不安定になったり、頑固になることも。そんな高齢者に個別に丁寧に接し続けるのは、忍耐が必要ね。
実際、現場を見て、介護職の大変さと専門性の高さがわかり尊敬したわ。介護施設での高齢者への虐待・暴力事件が後を絶たず虐待件数は年々増加、社会的に警戒が広がっている。低賃金、人手不足という課題を解決するためにも、介護職の現実と専門性を世の中に周知する必要を感じたわ。
総人口の二八・一%が六十五歳以上とすでに超高齢社会に突入した日本。全ての人が、老いゆく生も自分らしく生きていける社会にするために、何が必要なのか――。内側に入って深く考えさせられたわ。