平成も残すところあと四か月弱。振り返れば、平成時代は子供と命について考えさせられた三十年だったわね。
特に衝撃的だったのは、一九九七年の神戸の連続児童殺傷事件。その残忍さと、加害者が中学生だったことに社会には戦慄が走った。二〇〇一年には大阪教育大付属池田小学校で児童八名が命を奪われる。学校での安全が揺るがされる事件に、保護者や社会の不安は高まり、学校を閉鎖的にさせる直接的要因となった。
教育界が子供を抑圧する方向へ大きく舵(かじ)を切った最大の契機は二〇〇〇年前後、経済の競争原理が教育界にまで導入されたこと。〇六年の教育基本法改正以降、政治から教育への圧力は一気に強まった。
また、平成は「いじめ」が命にかかわる社会問題として注目され、克服に向け苦闘した時代でもあった。一九八五年、文科省によるいじめ状況調査がスタートし、二〇〇六年には大きく定義が変更。「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」と被害者視点の「認知主義」へと大転換される。一三年、「いじめ防止対策推進法」が成立、一七年には予防の視点が取り込まれた「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」発表。いじめは予防されるべき時代を迎えた。
しかし、児童生徒の自殺者数は増加、虐待件数も増加の一途。あっという間に家庭に普及したインターネットやスマホ、SNSは利便性やコミュニケーションの可能性を広げたけれど、ネットいじめや依存など子供に刃も向ける。
一方、被災地やスポーツ界はじめ様々なフィールドで、子供たちの計り知れない力や斬新な発想に驚く時代でもあったわ。次代こそ、大人と子供が手を携えて社会参加する時代にしていきたいわね。本連載は今回最終回(涙)。長らくありがとうございました!