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石破茂が明かす「安倍総理の後は誰かがやらなきゃ。その覚悟はある」

「ポスト安倍」アンケート1位 石破茂インタビュー#1

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党員票45%なのに、国会議員票が伸びない理由とは

――昭和15年、太平洋戦争を控えた帝国議会で「反軍演説」を行った政治家です。

石破 その斎藤隆夫代議士です。彼は保守政治家そのもので、愛国者でした。だからこそ収拾がつかない日中戦争へ疑問を呈する演説をする。あれは決して「反軍」ではありません。議場では万雷の拍手だったのにもかかわらず、1カ月後に彼の除名決議が行われて、それに反対した者は7名しかいなかった。でも、いまでも燦然と斎藤隆夫という名前は残っている。

 つまり、「あの時代でも、本当のことを言った人が少なくともいたよな」と後世に評価されることも一つの生き方なのではないかと思ったわけです。一方で、それは自己満足と言うんだよ、政治家なんだから世の中を変えなきゃ意味がないでしょ、という批判も当然にあります。

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 そんなことも意識しながら、去年秋の総裁選に臨みました。震災対応による3日間の短縮、後半になってしまったテレビ討論、少なかった街頭演説……制約はありましたが、できるだけ丁寧に、自らの思っていること、訴えるべきことを真摯に訴えようと努力したつもりです。結果として党員票の45%をいただくことができました。

――確かに、前回総裁選での党員票45%というのは非常に重い。それだけの支持を得ているにもかかわらず、国会議員票が伸びなかった(※安倍総理329票、石破氏73票)。2012年の総裁選もそうでした。党員票では石破さんは勝っていたのに、議員票で逆転された。この現象をどう受け取っていますか。

石破 なにしろ現職の総理と一騎打ちという構図ですからね。私も33年議席をお預かりしてきて、国会議員の動機の一端は分かるつもりです。私自身、若い頃は政務次官というものになってみたかったし、副大臣も、一度でいいから大臣というものもやってみたいと思ったことがありました。そういう気持ちがある人は、やはり現職に投じるものだと思いますね。それでも72人もの方が支持してくれたことを心から感謝しています。

 

 私は昔、政治改革の頃、小泉(純一郎)先生に逆らいまくって、それなのに小泉内閣で防衛庁長官を拝命しました。小泉総理は「いま誰を使えば政策が実現できるか」を第一に考えられたのだと思います。だけど安倍総理の周辺には、第一次安倍政権の教訓で「そんなこと言ってたら政権は維持できない」という思いがあるのかもしれません。とにかく政権を維持するためには何が必要か、という発想もあるのかもしれない。

 それでも、世論が大きく動く時には、国会議員も抗えないものです。これまた鮮明に覚えていますが、小泉先生対橋本龍太郎先生という総裁選がありました。