文春オンライン

1日徒歩20キロ アマゾン流通センターのバイトの過酷すぎる内情

ジャーナリスト・横田増生さんインタビュー #1

2019/11/01
note

―――もはや「ネット書店」ではなくなったということでしょうか?

横田 アマゾンについて書くにも、かつては出版業界とアマゾンだけ書けばよかったんですけども、いまはそれだけじゃない。本というコアを残しながらも、ぜんぜん違う企業になったなっていうのは今回、小田原の物流センターに入ったとき思いましたね。

 

 前にアマゾンの本を書いたときは、まだAWSもなかったですし、この15年でジェフ・ベゾス(創業者)はアマゾンをぜんぜん違う会社にしたんだな、という感じがしました。

ADVERTISEMENT

ぜんぶ機械化したい気持ちは山々だが……

―――それでも倉庫は相変わらずの人海戦術のようで。

横田 ピッキングの話題になると、それも機械化すればいいじゃないかって話になるのですが、機械でできるのは同じカタチのものに対してで、アマゾンがあつかう商品はカタチが全部違うから、それができないんです。ロボットの会社を買収して「アマゾン・ロボティクス」という社内の組織にしますが、彼らをもってしても、いまだ機械でのピッキングはできていない。ぜんぶ機械化したいのは山々だけども、ピッキングする要員として人を必要としています。

―――そのかわりに、機械で人を限界まで使う術(すべ)が発達したのでしょうか?

横田 以前は「1分3冊」をピッキングするっていう目標だったのが、今は15秒とか20秒とかハンディ端末に次の商品までの目標が出てくる。作業が遅かったら、あとで面談があると言われています。でも早かったからといって時給が上がるわけじゃない。ただお尻を叩かれているだけで。作業の成績ランキングが毎日貼り出されたりとか、「早くしなきゃ」と思わせるための仕掛けがいっぱいある。

 

―――そうやって緊張を強いられ続けるのは、しんどいでしょうね。

横田 イギリスのBBCが制作したアマゾンの物流センターへの潜入レポートがあって、そこに公衆衛生学の研究者が登場します。その先生が取材テープをみて、「こういうふうにプレッシャーをかけられたら、メンタルに問題がでる。フィジカルにも悪い。とても問題がある職場だ」といっています。1日中、時間に追われながら2万5000歩も歩くし、心身的にしんどいから、長時間労働でもないのに、亡くなる人も出てくるわけです。

◆◆◆

後編では、横田氏が取材した小田原物流センターにおける死亡者について詳しく聞いている。

写真=松本輝一/文藝春秋

潜入ルポ amazon帝国

横田 増生

小学館

2019年9月17日 発売

1日徒歩20キロ アマゾン流通センターのバイトの過酷すぎる内情

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー