ユニクロやヤマト運輸に潜入取材するなど “企業にもっとも嫌われるジャーナリスト”と呼ばれる横田増生が、このたび、アマゾンのなかでも国内最大規模といわれる小田原物流センターに入るなどして、『潜入ルポ アマゾン帝国』(小学館)を著した。

 アマゾンへの潜入は『アマゾン・ドット・コムの光と影』執筆時の取材以来で、15年ぶり。 「ネット書店」だったアマゾンも、今ではAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)など事業を広げ、生活するうえでなくてはならない企業までになる。

 そうしたアマゾンが引き起こす、労働環境や宅配業者の疲弊、租税回避といった問題を新著ではまとめている。前回に続き、今作の主な潜入先である小田原物流センターで死亡者が出ている件を中心に話を聞いた。(全2回の2回目/#1より続く)

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―――死亡者については、横田さんは複数の関係者の証言を得たり、遺族に取材されるなどしています。

横田 小田原の倉庫では、これまでの取材でわかっているだけで4年間に5人が亡くなっています。それで全部かどうか、アマゾンは答えていませんし、物流センターは全国で約20箇所あるので、日本全体だと何人が亡くなっているんだよっていう話ですよ。それを明らかにすることなく、アルバイトを集め続けるのは「どうなん?」っていう気がします。

―――人が亡くなる職場で働くのは不安でしょうね。

横田 10人くらい亡くなったという噂もあるし、アルバイトのなかでも、そういう話をいっぱい持っている人がいます。僕も作業中に車椅子で運ばれる人を見ましたけれども、その人がどうして運ばれたかの説明はなかったですね。

 

 カッターで手を切ったなどの事故については、1週間くらい毎日朝礼で言うわけです。だけど人が亡くなった話は絶対に出てこない。でも働いているとわかるし、倒れて運ばれるのを見ている人もいるので、なんで言わないんだっていう不信感が出てくる。疑心暗鬼にもなるし、あの人も死んだんじゃないかみたいな都市伝説にもなるし、ろくなことはないですよね。

―――倉庫内の死亡者はネットメディアでも取り上げられて話題になりました。

横田 死亡者について書いた記事がネットで公開されると、かならずヤフコメに否定的なコメントがつくんです。「たいしたことじゃない」「もともと病気をもっていたからだ」みたいなコメントが、なぜかいっぱい書き込まれる。不思議な現象ですよね。

人が倒れてもすぐに救急車が呼べない理由

―――ルポには人が倒れても、救急車をすぐに呼べないとあります。

横田 アルバイトは直雇用でなく、あいだに派遣会社をはさんでます。だから、まず現場から派遣会社へ、派遣会社からアマゾンへ……と報告が上がってから救急車がようやく呼ばれます。取材では、アルバイトの方が倒れてから救急車が到着するまで、1時間以上かかったケースがあったことも分かりました。

 それで人が亡くなってもアマゾンには責任がない。誰が死んでも、アマゾンが契約している人が亡くなったわけではないので、痛みも感じないですよね。

 

 それにしたって、倒れてから何十分も放置っていうこと自体がおかしいし、小田原だけで4年間に少なくとも5人も亡くなる作業現場自体がおかしいし、それを全然発表しないのもおかしいし、それをどこも報道しないのもおかしい。おかしいことだらけですよ。