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企業に嫌われても、商品は嫌いにならない

―――横田さんは取材先の企業に嫌われながらも、商品やサービスは嫌いにならないですね。

横田 アマゾンを使うなっていうのは極端だし、宅配便も使わないわけにはいきませんからね。前に潜入した「ビックロ」にいくと、警報がなるんですよ。働いている人にご迷惑をかけても悪いので、ユニクロはいかなくなりました。でも、このジーパンはユニクロかもしれない(笑)。

 便利なものは便利なものとして使う、そういうところは認めとかないと。ボイコットまでいくと、僕の気持ちとしても外れるし、読む人の気持ちもつかめない。だから使いながらもその裏はなんなんだろう、というのが僕のベースにある気がします。

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―――海外ではアマゾンをボイコットする動きもありますが。

横田 そうしたってアマゾン自体が変わるわけじゃない。「僕は20万円買うのやめました」と言っても、アマゾンにしたら「あっそう」っていう話でしかないですもんね。

 それでも、できることはまず知ること。知ることで、アマゾンプライムで何かを買うにしても、「お急ぎ便」や「時間指定」じゃなくてもいいやとか、些細なことだけれどもできます。僕は宅配便を使う時は時間指定しないんです。それだけでも配達するドライバーからすると、だいぶちがいますから。何時に運んでもいいってなると、配送ルートを組み立てやすくなる。

日本でアマゾンが変わるには?

―――世界中で問題となっているアマゾン、日本で良い方向に変わることはあるのでしょうか?

横田 消費者でなくアマゾン自体が変わらないと意味がないですよね。でもそのためには大きな力がかからないと、企業の人たちは動かない。過労死基準に達してないから労基は入りづらいんでしょう。それにしても長時間労働でもないのに人が亡くなるっていうのは、やっぱりおかしい。

 

 僕は労働組合が日本でもできることを期待しています。ただ人の入れ替わりが激しいから労組もできにくい。ドイツはかなり定着率が高いので労組ができています。それにドイツの場合、派遣会社を挟む日本と違って、アマゾンとの直雇用だから労組もつくれた。

―――そうすると政治や行政に期待ですか?

横田 今頑張っているのは政治家、国税庁、公取委ぐらいですか。国税が動くだけでもだいぶ違います。政治家も、国会で三原じゅん子さんなどがちょっと質問しているけれども、もっとつっこんでもいい。税金を払ってないこと自体もほとんど知られてないし、これは国として大きな問題ですよね。誰かが言わないと、この企業の人でなしぶりは、変わらないと思います。

 

写真=松本輝一/文藝春秋

潜入ルポ amazon帝国

横田 増生

小学館

2019年9月17日 発売