ユニクロやヤマト運輸に潜入取材するなど “企業にもっとも嫌われるジャーナリスト”と呼ばれる横田増生が、このたび、アマゾンのなかでも国内最大規模といわれる小田原物流センターに入るなどして、『潜入ルポ アマゾン帝国』(小学館)を著した。
アマゾンへの潜入は『アマゾン・ドット・コムの光と影』執筆時の取材以来で、15年ぶり。 「ネット書店」だったアマゾンも、今ではAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)など事業を広げ、生活するうえでなくてはならない企業までになる。
そうしたアマゾンが引き起こす、労働環境や宅配業者の疲弊、租税回避といった問題を新著ではまとめている。ここでは今作の主な潜入先の小田原物流センターでの取材を中心に話を聞いた。(全2回の1回目/#2へ続く)
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―――ルポには、アマゾンの倉庫でのバイトは「誰でも合格する」とあります。実際50代の横田さんも……。
横田 アルバイトであれば、誰でも受かります。時期にもよりますけれども、今なら、年末にむけて出荷量が増えるので、誰でも雇うと思いますね。年齢性別一切関係なしの「イレグイ状態」じゃないですか。
―――かつて潜入したユニクロは、さすがにもう受からない?
横田 ユニクロは無理だろうなあ(笑)。それに年齢的にもアパレルの接客業は『ユニクロ潜入一年』のときでも随分、違和感があったんで。50代で時給1000円のアルバイトは、まあ、浮きますよねえ。
―――ヤマト運輸にも潜入して『仁義なき宅配』を書かれています。
横田 初めに潜入したときは、彼らは気づいていなかったんです。でも、潜入を終えてから決算会見で正面から取材した後に「あいつはもう一回潜入してくるかもしれない」って思ったみたいで。それで全支店長に僕の本名をさらしたメールを一斉に流したんですよ。「(秘)記者の入社に関する注意喚起」というのを。
―――まるで指名手配犯あつかいですね。なぜその文書のことを知っているのですか?
横田 ドライバーと仲がいいんで、彼らがすぐに教えてくれるんです。「横田さん、こういうのが出てますよ。要りますか?」って。後でヤマトの広報に文書を流したことを確認したら「個人情報だから教えられません」との回答がありました。流されたのは僕の個人情報なのに。
―――昔から仕事がしんどいので有名な佐川急便にも潜入しながら、そこでの経験は本には書かれていません。
横田 佐川がきついのは、他の宅配業者よりも大きい荷物を扱うからなんです。大きな荷物の「荷引き」ってとってもたいへんなんだけれども、僕は年齢のせいでやらせてもらえなかった。取材のためにはもう少し苦労したかったんだけど、小さな荷物ばかりで、あんまり苦労しなかったです。それでも、夜9時から朝7時とか8時までやりましたね。
歴代潜入先の中でも「アマゾンが一番しんどかった」
―――アマゾン、ユニクロ、ヤマト運輸、佐川急便、どこが一番きつかったですか?
横田 やっぱりアマゾンが一番しんどかったです。ずっと歩くし、休みがないですから。たとえばヤマトだと荷物がシューターから下りてこないときがあるんですよ。そういう“空白の時間”にダラッとできる。でも、アマゾンはダラッとできる時間が一切ないんです。