―――ルポには「あなたのおサボり見ています!!」と書かれた張り紙があったと……。
横田 作業中は1時間に何回、時間通りに商品をピッキングできたかと、1時間のうちに何分ピッキングしていたかが測られます。それらが全部、作業のときに持ち歩くハンディ端末に記録が残って、常に彼らはそれを見ている。
ヤマトや佐川だと誰が何の作業をしたかは、「そこのラインの誰かがやった」というところまでしかわからない。それがアマゾンだと、この商品を誰がピッキングして、誰がどこに置いたかといった情報もあとで引っ張れる。だから常に見られている感じが満載ですね。それは僕だけでなく、ヨーロッパで潜入取材したジャーナリストも言っています。
―――ハンディ端末が上司みたいな職場ですね。
横田 ハンディ端末に「あと何秒で次の商品をピッキングしてください」と指示されるのが、ずっと続きます。ユニクロだと店舗なので、接客で人と喋ったりするので気が紛れたりするんだけども、アマゾンでの仕事は人としゃべる要素がまったくない。ただ機械と対峙してやっている感じ。だから潜入取材したなかでは、アマゾンは人間的でない点でも一番だし、しんどいっていうのでも一番だと思う。
―――本や日用品を運ぶだけでも、肉体的にきつい?
横田 1日2万5000歩、20キロ歩きますから。なかなかないんじゃないですか、こんなに歩く仕事は。倉庫には、なにも持って入ってはいけなかったんですけど、時計はよかったので、万歩計のついている時計をつけて測りました。それもアマゾンで買ったものなんですけど。
―――それでも、働き手が集まるのはなぜでしょうか?
横田 小田原あたりからもうちょっと西にいくと、ぜんぜん仕事がないそうです。熱海からも来ている人が何人もいましたが、コンビニくらいしかバイトがないと。そういうビジネスの薄いところにアマゾンは物流センターをつくっているようにも見えます。ドイツの労組やイギリスのジャーナリストも、そういうことを言っていました。
止むに止まれずとまでは言わないけれども、そんなに多くの選択肢を持っていない人たちを集めている印象です。
本のセクションには1日1回行くかどうか
―――ルポを読むと、『ユニクロ潜入一年』を著者自らがピッキングしたりしていますね。
横田 そうでした(笑)。本のピッキングは「こんな本があるんだ」「あそこの出版社から出ているんだ」とか気づくことがあって、まだ面白いです。でも、15年前に潜入したときは倉庫自体に本が多かったけれども、今回取材で入った小田原だと全体の1割くらいしかなくて、本のセクションには1日1回いくかどうかでした。